~愛すべき「本格ミステリ」の世界~

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音倉誓示(Otokura Seiji)

Author:音倉誓示(Otokura Seiji)
魅力的な謎。論理的な解決。そして少しの遊び心♪
「本格ミステリ」の魅力が少しでも多くの人に伝わりますように。
元、某地方書店チェーンの店長。
九州在住。

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2009年5月13日(水)、都内某所にて「第9回本格ミステリ大賞公開開票式」が開催されました。
当日の雰囲気が少しでも正確に伝わるよう順を追って書いていきますが、その前にまずは結果だけ。

すでにご存じかとは思いますが、この日の公開開票式の結果、小説部門は牧薩次さんの「完全恋愛」が、そして評論・研究部門は円堂都司昭さんの「「謎」の解像度」が第9回の受賞作に決定いたしました。
牧薩次(辻真先)先生、円堂都司昭先生、おめでとうございます!
辻先生・円堂先生(第9回本格ミステリ大賞公開開票式)記者会見後

さて、それでは早速公開開票式の模様を。

まずは定刻の午後4時、本格ミステリ作家クラブ北村薫会長の挨拶で、いよいよ「第9回本格ミステリ大賞公開開票式」が幕を開けました。

北村薫会長の挨拶(第9回本格ミステリ大賞公開開票式)←私の前に座っている白いシャツの高校生は作家志望の「パズル」くん。その隣に座っている大学生の彼は、某T大学(って書くとまるで東大みたいですが)のミス研部員だそうです。

北村「え~それでは定刻になりましたので、第9回本格ミステリ大賞、開票の方に移らせて頂きたいと思います。毎回の事になりますが、集まりました物をこちらで改めて確認いたしまして、こちら(スクリーン)に順次結果が出ていくようになります。一応すべての結果が出ましても、その段階でちょっと字数制限など(再度)確認を取りますので、結果が出て、確認を取ってから確定という形になります。はたして今回も力作揃いですが、どのような形になりますか、第9回の本格ミステリ大賞、この場に同席頂きまして、その瞬間を味わっていただければと思います。それではこれより開票に移らせていただきたいと思います」

投票箱が解錠され、中の投票用紙が次々と執行会議の面々(歌野晶午さん、東川篤哉さん、黒田研二さんなど)に渡されていきます。
黒田研二さん(第9回本格ミステリ大賞公開開票式)←真剣な表情で投票用紙の字数チェックをする黒田研二さん。

綾辻「(黒田さんたちの方を見ながら)字数のチェックをしておりまして、それが廻ってきて・・・・・事務局長の特権で、開票結果を読み上げていきます。」

と言っている内に、早速最初の一枚が綾辻事務局長の手に渡されます。
綾辻行人さん(第9回本格ミステリ大賞公開開票式)
綾辻「小説部門、藤岡真さんの投票です。造花の蜜」
といった調子で、部門・会員名・作品名が続々と読み上げられていきます。
ちなみに投票箱には「小説部門」「評論・研究部門」それぞれの投票用紙が一緒に入っていますので、読み上げる(票が入る)順番も、小説部門がしばらく続いたあと突然評論・研究部門が何件か読み上げられ、また小説部門、と完全にアットランダムに同時進行で開票作業が進んでいきます。

各作品の得票結果は下記の通りです(敬称略、読み上げ順)。

小説部門
「完全恋愛/牧薩次」(23票)・・・岸田るり子、佳多山大地、夏来健次、ひらいたかこ、有栖川有栖、斎藤肇、廣澤吉泰、黒田研二、北村薫、伯方雪日、村瀬継弥、光原百合、法月綸太郎、鏑木蓮、獅子宮敏彦、篠田真由美、鯨統一郎、森谷明子、綾辻行人、加賀美雅之、川出正樹、霞流一、我孫子武丸。
「裁判員法廷/芦辺拓」(4票)・・・早見裕司、依井貴裕、大森滋樹、山沢晴雄。
「造花の蜜/連城三紀彦」(13票)・・・藤岡真、白峰良介、氷川透、近藤史恵、渡邉大輔、張麗嫺、諸岡卓真、横井司、門前典之、小森健太朗、神命明、東川篤哉、鷹城宏。
「ペガサスと一角獣薬局/柄刀一」(6票)・・・つづみ綾、歌野晶午、太田忠司、辻真先、蔓葉信博、西澤保彦。
「山魔の如き嗤うもの/三津田信三」(11票)・・・剣持鷹士、円堂都司昭、喜国雅彦、大山誠一郎、二階堂黎人、倉知淳、奥田哲也、千街晶之、深水黎一郎、鳥飼否宇、波多野健。

評論・研究部門
「幻影城の時代 完全版/本多正一編」(7票)・・・夏来健次、諸岡卓真、太田忠司、深水黎一郎、二階堂黎人、奥田哲也、波多野健。
「探偵小説のクリティカル・ターン/限界小説研究会編」(2票)・・・つづみ綾、小森健太朗。
「「謎」の解像度/円堂都司昭」(13票)・・・藤岡真、近藤史恵、氷川透、千野帽子、有栖川有栖、依井貴裕、法月綸太郎、大森滋樹、北村薫、辻真先、鷹城宏、横井司、西澤保彦。
「本格ミステリ・フラッシュバック/千街晶之ほか」(3票)・・・鯨統一郎、廣澤吉泰、村瀬継弥。
「密室入門!/有栖川有栖×安井俊夫」(2票)・・・山沢晴雄、川出正樹。

小説部門では、序盤まず「完全恋愛」が一歩リードしたものの、「造花の蜜」と「山魔の如き嗤うもの」がすぐに追いつき、一時この3作品が横一線に並びました。その後また「完全恋愛」が抜け出し、またまた「造花の蜜」がこれに追い付いたのですが、さらに「完全恋愛」が票を重ね、終わってみれば大差での受賞となりました。
また評論・研究部門では、序盤から「「謎」の解像度」が独走態勢に入り、終盤「幻影城の時代 完全版」が少し追い上げますが届かず、危なげなく円堂都司昭さんの受賞が決まりました。
評論・研究部門の候補作は「密室入門!」しか読めていなかったため意見を言える立場ではありませんが、小説部門の方は、自分にもし投票権があればこれに入れていただろうという「完全恋愛」が見事受賞し、また有栖川有栖・黒田研二・北村薫・法月綸太郎・鯨統一郎・綾辻行人・我孫子武丸といった、自分が好きな作家さんの多くがこの作品に票を投じていたのも嬉しく感じました。


綾辻「という事で、読み上げ終わりました。このあと確認をするんですか?」
北村「え~確認がありますので、それが終わるまで確定ではありませんので、ちょっとお待ちくださいませ」

得票数など、間違いが無いか再度確認作業。

綾辻「はい、確定しました~」
北村「え~、それではただいま票が確定いたしましたので、ご覧の通り第9回本格ミステリ大賞は、小説部門は「完全恋愛」が23票を取りまして受賞。そして評論・研究部門は「「謎」の解像度」が13票を取りまして受賞となりました」

このあと北村会長から、一時間後の午後五時半から記者会見が行われる旨、また授賞式が6月13日(土)に神楽坂の出版クラブ会館で行われ、その翌日には丸善丸の内オアゾの日経セミナールームでトークショーなどのイベントが行われる旨の説明がありました。以下はイベントについての北村薫さんのお話です。

北村「これは本格ミステリ作家クラブの方からこういうことをやっておりまして、出版社の方との会合を持つ中から「賞というものは販促に繋がることがあまり無い」という――その頃はまだ本屋大賞などもなく――なにかこう具体的な事をしたいというのがありまして、こういう催しをこのところ続けております。会場を借りるのにも結構お金が掛かるんですが、その辺りも非常にご考慮いただきまして(笑)、私が司会をやりまして、我々の方からも人を出しまして、毎回非常に面白い催しになっております。我々の方はもちろんノーギャラでやっております(笑)、とにかく多くの方に来て頂いて、そこで本を買っていただきたい!という催しなんです。ぜひ本屋さんに元気になっていただきたい、出版社に元気になっていただきたい、そうすると書く方も元気になる、と。ぜひ本をお好きな方に、多くの方に足を運んでいただきたい。それから、こういう催しをやってるんだという事をぜひ色んな所で広めていただきたい。書店さんにバトンを渡して、一番最初の時は三省堂さん、去年が池袋のジュンク堂さん、これは一つの書店さんでという事じゃなくて、書店さんにバトンを廻していって、みんなで出版を元気にして行こうじゃないか、という催しなんで、多くの方に「こういう事をやってるんだ」と、「本に関わる人達みんな元気になろうじゃないか」という事で6月14日の午後1時から丸の内オアゾで行います。では5時半から記者会見を行いますので、ちょっと間が空きますが、それまでお待ちいただければと思います」

*イベントに関する情報はこちらから→6/14(日)「第9回本格ミステリ大賞受賞記念トークショー」(丸善丸の内本店)
↑(追記)イベントは終了しましたので、リンクは削除しました。


???(←綾辻さんだったかな?)「以上で開票式終了ですね。受賞者の方おめでとうございます!」
(会場、割れんばかりの大拍手につつまれる)


そしてここから記者会見までの一時間は、休憩時間という名の「サイン・交流タイム」です。開票式開始前に引き続き、多くの作家さんとお話をさせていただいたり、持参した著書にサインを頂いたりしましたが、それについては別の記事で(「第9回本格ミステリ大賞公開開票式レポート(ミーハー編)」)。


そして予定通り午後5時半、受賞された牧薩次(辻真先)さん・円堂都司昭さんの記者会見が始まりました。
会見席には北村薫会長、牧薩次(辻真先)さん、円堂都司昭さんの3名が座っています。

司会(←末國さんだったかな?)「では定刻になりましたので、只今から第9回本格ミステリ大賞受賞の記者会見を行います。先ほど16時より公開開票式を開催いたしまして、小説部門が牧薩次さんの「完全恋愛」、評論・研究部門が円堂都司昭さんの「「謎」の解像度」に決定しました。では、まずは受賞されたお二人からお言葉を頂きたいと思います」

辻真先さん(第9回本格ミステリ大賞記者会見)
辻「え~、あの~牧薩次が今日ちょっと忙しいもので(会場爆笑)欠席しておりますので、私が連帯保証人として出て参りました。あの~牧はまだそんなに歳じゃないんですが、僕自身相当な歳なものですから、これが男の花道になるなんて思っていたんですけれどもね、今日も後ろの方でありがたいハッパをかけて頂いて、これ(本格ミステリ大賞)を貰ったからにはこれから書かかにゃいかんという事で、じゃあやっぱりこれをスタート台というつもりで、実は去年アニメの方では文化庁やなんかで3つぐらい賞を貰ったのですが、ところが考えてみますとあれは「昔はよくやったね~ごくろうさんだった、そろそろ選手交代だよポンポン」と肩を叩かれた、そういう賞みたいな気がするんですよ。こちら(本格ミステリ大賞)の方は「今お前現役でとにかくこの程度やってるんだから、これで逃げちゃだめだよ」と、励ましというかお叱りというか、とにかく後ろから背を押された、ドンと前へ行けっ、そういうつもりだと思いますんで、押された先は断崖絶壁かもしれませんけども、せっかくですからもう少し頑張ってみたいと思います。これからもどうぞよろしくお願いいたします。本格ミステリ、万歳ですね(会場大きな拍手)」

司会「ありがとうございました。続いては円堂さん、よろしくお願いします」

円堂都司昭さん(第9回本格ミステリ大賞記者会見)
円堂「円堂です。大変アガっておりますが、本格ミステリ大賞、今回で第9回という事になりますけれども、第1回の時にですね、私の「小説トリッパー」という雑誌に掲載された「POSシステム上に出現した「J」」っていう清涼院流水について論じた40枚ほどの評論があったんですが、それを候補にしていただきまして、本格的にミステリの評論を書き始めて間もない頃でしたから、その時に候補になったという事が非常に励みになりまして、その時に書いたものも今回の受賞作の中には入っているんですが、その第1回の時に候補になったという所をひとつ出発点としながら頑張ってきたというような感じです。ですので第9回になったこの時点で、改めて本格ミステリ大賞にノミネートされて、受賞できたっていう事が、大変、感激しております。どうも、ありがとうございました(会場大きな拍手)」

*以下の質疑応答には一部「完全恋愛」のネタバレを含みますので、未読の方はご注意くださいませ。

司会「ありがとうございました。それでは会場の方から何かご質問等ありましたら挙手をお願いいたします」

質問者①「あの~、辻先生というか牧先生に伺いたいんですけれども、本来長く使っていらっしゃる「辻」名ではなく、この一作の「牧薩次」で受賞なさったご感想というのはいかがなんでしょうか」

辻「え~、まあ楽屋裏をぶっちゃけてしまえば、マガジンハウスというのはあまりミステリーの方とは関係ないので、たぶんタイトルとしては恋愛の方が座りがいいんじゃないか、更にぶっちゃけて言えば、それで引っかかって間違えて買うお客さんがいるんじゃないか、それでただし、こちらがそれで手を抜いていたのだったらこれは詐欺みたいなものですが、そういう風に馬の前に人参ぶらさげて、でもだったらその人参が美味しくなければいけないんで、で、とにかくこの一本こっきりというのは、まあ今の所これ一本のつもりでおりますから、いろんなあの手この手なんか入れてもおかしくないという事で、辻ではなくてまったく別の人間の牧が書いたと、いう事で書く気分としてはそれなりにリキが入りましたし、でも後半になるとやっぱりどんどん馬脚が現れまして、「Bar蟻巣」とかなんかどっかで聞いたことのあるようなのも出てましたけれども、とにかく最初に今回は辻ではなく牧であろうというつもりになったのは、その辺の所ですね。商売気も多少ありますけれども、そういう形にした事によってかえって今まで自分では書けなかったような物が書けるんじゃないかという。上手くいったかどうかまったく分かりませんけれども、まだ自分でもたいへん曖昧なものもありますけれども、一度はやっておいて良かった実験だろうと思っております」

質問者①「ご自分で、これを形にした事で今まで書けなかった物が書けたかもしれないという事をおっしゃった、それを、こういう風に長い時間という事でみる、その人の一代記みたいなもの、という事でしょうか」

辻「あ、それもありますけど、こういう戦争を絡めて60年70年のスパンの長~いお話というのは、実は完全な純然たるミステリーとは言えないかもしれませんが、冒険小説的なものであるとか、他の形で実は色々とやってはいるんです。いるんですけれども、それが・・・商売になっちゃうな(笑)、あの~「ピーターパンの殺人」というずいぶん昔に出しましたものを手直しして今年中に文庫で出る事になっておりますが、それなんか完全にこれぐらい長~い期間の時間なんですが、やはりそうなりますと「ピーターパンの殺人」というタイトルからしましてもやっぱりミステリーじゃないですか、どう考えても本格ミステリ以外の何物でも無いわけです。その点では「完全恋愛」の場合はこれはラブストーリーとして一応完結というか、出来ましたので、その点では辻真先のままだと何となく面映ゆかったり、照れくさかったり、書けないものが、牧というまったく架空の人間が書いた架空の話という二重に架空なもんだから余計書きやすかったという事はあったかと思っております」

司会者「よろしいでしょうか。その他に何かご質問等はありませんでしょうか」

質問者②「牧薩次イコール辻真先先生、おめでとうございます。推理小説、特に本格ミステリーは犯人を隠したまま進みますんで、人間の内面、人間の存在、どういうものだというのは描きにくいという風に言われますが、こういう形で人生が描けるんだなという感動をいたしました。「完全犯罪」は誰にも気付かれずに完結する犯罪、「完全恋愛」というのは誰にも気付かれる事なく完結する恋愛という、ものすごく、今まで聞いた事もないような発想で、奇想だと思うんですけども、それが次々とトリックを生み出すという小説に舌を巻いたのですが、この「完全恋愛」というコンセプトですね、それが数々のトリックを生んで小説になるべく立ち上がっていったのか、それともそのトリッキーなお話を書こうとしている中で「完全恋愛」というモチーフが途中で浮かんだのか、その辺りの順序がすごく興味があるんですけども、どんな感じだったんでしょうか」

辻「あの~順序でしたら、やっぱり最初にまず「完全恋愛」というのがありました。そこから、今までいくつかミステリーを書いて、あれも書きたいこれも書きたい、でもとても長編を支えるだけの柱にならないなというような、そういう中途半端に放り出していた、そういうネタをこの中に組み込めないかという事で、それで色々と探して、とりあえず3つ、ただし一番最後のだけは・・・・・ネタバレですね(笑)、これはこれで構わないとは思いますけど、これは苦しまぎれです。あそこで編集の人に色々と、これじゃあもう、すぐ分かっちゃうからダメじゃない、と言われちゃって、まったく僕もダメだと思ってました。その通りだと思ったんですけども、じゃあどうしようというんで考えて、ついに、どなたかがネットか何かでお書きになったのでは、これはバカミスではないかと、その通りであります。あれはだから最初トップの場面、これはまあ本当の名前はついに出ませんでしたが、主人公が「究(きわむ)」で、それからもう一人の、女みたいに見せてやっぱり男の双子の「極(きわみ)」なんですけども、このシーンというのはずっと後になって付け加えたわけです。そういう点ではちょっと型が崩れたかな~とは思いますけれども、何とかむりやり嵌め込みました。ですから順番としては完全に「完全恋愛」が先で、そこに嵌め込んでいく3つのお話を、最後のお話は嵌め込みにくくて困りました、そういう事でございます」

質問者②「よく分かりました。どうもありがとうございました」

司会「その他に何かご質問等ありませんでしょうか」

質問者③「円堂さんにお尋ねします。円堂さんは音楽を始めとしてサブカルチャー方面でもずいぶん色んなことをお書きになっていらっしゃるんですけども、そういった仕事と、本格ミステリについて書くことっていうのは、関係・・・あるいは難しさみたいな物がありましたらお伺いしたいのですが」

円堂「え~と、僕の個人的な体験なんですけれども、ミステリーに関しては小さい頃、小学校の低学年ぐらいから江戸川乱歩とか読んでましたけれども、同時代のものを読みだした時期っていうのが、印象に残ってるのが栗本薫の「ぼくらの時代」なんですね。70年代の後半だと思いますが、ちょうどそれと同じ時期にロックを聴き始めまして、栗本薫の「ぼくらの時代」っていうのはバンドをやってる若者たちが主人公で、本の中に色々、レッド・ツェッペリンとか、当時の有名なロックバンドの名前がちらほらと書き込まれていて、そういうのをメモに取りながらロックのLPを探す、みたいな事もしていたんで、僕の中では本格ミステリーとロックと一緒に自分の中に入って来たという感じで、特に違和感が無いというか・・。え~、更に言ってしまうと、ミステリーの評論っていうんではないんですが、同時代の評論という事で最初に読んだのは、栗本薫の別名の中島梓の「文学の輪郭」だったりするんですね。だから評論っていう文化を一緒に摂取したというか、で、その延長上の感覚でやってますんで、自分の中では特に意識しなくても自然とジャンル横断的な考え方をしてしまうというか、捉えてしまう、特定のジャンルを、マニアのような振る舞いは逆に出来ないという体質になっています、はい」

司会「よろしいでしょうか。その他に何かご質問ありませんでしょうか」

質問者①再び?「これはあの、北村さんに伺うのかもしれませんけれども、それぞれお二方の作品の良いと思われた点などを教えていただければと・・、あの北村さんじゃなくても投票された方どなたかでもいいんですけれども、選ばれた理由など伺えればと思いまして」

北村「それは~漠然的に言われてもあれなんですが、私の意見、という事でよろしければ・・・私自身が「完全恋愛」というものを読んでいって、本当に99.9%まで読んだ時は「山魔」に入れようかと思っていたんですけれども(笑)、一番最後の所で本当に驚きまして、本格ミステリーというのはやはりこういう事が出来るのか、こういう風にトリックと言いますかね、そこの所が物語という事に繋がっていくのかと、いう点で非常に感銘を受けました。何より最後で、あの~もうこの歳になって若い頃から本格を読んでると、まぁ~驚くって事はまず無いんですよね(笑)。ですけども、あまり構えた読み方を、つまり本格として構えた読み方をさせない、というのが、要するにまあそれだけ普通小説として読んだという事なんですかね。こちらがだから身構えていない所をいきなり投げられたと、いう感じがして、そこの所が非常に新鮮でした。本格ってやっぱりこういう事が出来るのかと、いう風な事の、そういう点を非常に評価いたしました。円堂さんの作品の場合は本当に非常に長い時間に渡る、丹念に作られた、思索の深いものをこれだけまとめられたと。こちらから逆に聞きたいとすると、長いスタンスで書かれた物をまとめると、小説はまあその時点でそう書いたという事なんですが、何かこう、あの時はああ書いたけど今となれば、でもあの時の思考だからこれはまあここでこの通りにまとめよう、というような、今となれば、という風なその書いている評論家自体の思考の変化と、それから長期の物を一冊にまとめるという事はどうなのかという所、とかそのへんちょっと」

円堂「そうですね、昔の文章に関してはやっぱり今とは微妙に文体とかが違っていて、それこそあの、ある言葉を漢字で書くか平仮名で書くかみたいな事も昔と今では感覚が違っていたりするんで、そこらへんは文章の手直しをして、今のテンポにするというような事をしたんですね。で、基本的な自分の考え方っていうのはあんまり変わってないんです、たぶん。って言うのは、自分で意識的にしたことなんですけれども、この評論の中ではサンプリングとかリミックスとか、音楽の方でもポピュラーな手法について言及している、サンプリング・リミックスというような観点から本格ミステリを読んでみる、というような事をしてるんですが、そういった事っていうのは音楽雑誌に書く原稿でも書いてきた事で、実は最初にミステリの評論を書くよりもはるか前に音楽雑誌で書いた文章を自分でサンプリングして使ってみるとか、20年前ぐらいの大学時代に書いた文章をあえてサンプリングして使ってみるとかっていう事もしてるんですね。そういう意味では、それこそ大学生の頃から基本的な物の見方とかいうのはあんまり変わってないのかもしれない、それで基本線は変わらないけれども肉付けを変えていくというような形ですね、自分の中では、はい。これで答になるでしょうか」

司会「会場の方から、他に何かありますでしょうか」

質問者④「牧薩次さん、おめでとうございます。昔から薩次とキリコの愛読者であった人間としては、チラッと今回出てきてましたが、キリコの活躍は今後考えておられるのでしょうか、というミーハーな質問をしたいと思います(笑)」

辻「あの~、大変あの人も怒ってますんで(笑)、どうして自分をもっと出さないのかと、こないだNHKのドラマ(←「探偵Xからの挑戦状!」ですね)にはほんのちょっぴりだけ出しましたけれども、あの~いま一応予定しておりますのでは、あの人もね~かなり歳になったんですが、この辺で出産をいたします。子供をこしらえるんです。それからわたくしあの、今回のアレなんか、あの山魔みたいな三津田さんみたいなああいうのも書きたいんですよ。でも完全恋愛ではああいうのは絶対書けませんよね。だから今度はもう、一応仮題では「戯作(げさく)・誕生殺人事件」という恐ろしく矛盾した話ですけれどもね、それを仮題という事で、これがたぶんキリコの最後の、うまく生まれるかどうかというね、そういう話になりますので・・・」

質問者④「名義はどうなるんですか?発表の名義は」

辻「え?これはもう辻真先しかしょうがないんです(笑)。と言うのがね、あの~牧くん本人がいないんですよ、肝心なね~、自分の愛妻が子供が生まれるという時に他に仕事があってね、だもんですから、それで、いやあの予定日はもっと後だったんですが、それがいろいろとその真犯人が現れてですね、それで陣痛になってという事になるんで、それで現場に立ち会ってない牧薩次が書いたらこれはやっぱり奥さん石を投げますよ(笑)。だからこれはわたくしが書くという事になると思っております」

質問者④「ありがとうございます」

司会「よろしいですか。会場の方から他にございませんでしょうか。では最後に北村会長の方から連絡事項がありますんで」

という事で、このあと北村会長から再度、授賞式の翌日の6月14日に丸善丸の内本店の日経セミナールームで、今回受賞のお二方と有栖川有栖さん・黒田研二さん、そして北村会長の計5名でのトークショー(先着100名)が開催されるので、ぜひ参加して頂きたいというお話がありました。

その後、司会者の締めの言葉と会場からの大きな拍手に続き、受賞されたお二方の記念撮影で記者会見が締めくくられました。



いや~とにかく最初から最後まで夢のような体験でした。芥川賞でも直木賞でもなく、本屋大賞でもなく、この「本格ミステリ大賞」という、ミステリファンにとって最高峰の賞が決定する、まさにその瞬間に立ち会えたという幸せ。そして、別世界の住人のように感じていた数々の作家さんたちが目の前にいて、快くサインも頂き、気さくに色々なお話が出来たという幸せ。そして何より忘れてはいけないのが、自分と同じように本格ミステリを愛し、このジャンルを盛りたてていこうとしている読者の皆様に出会えた幸せ(中には私のこのブログを知っている方も数名いらっしゃって驚きました)。

来年はどの作家さんが、そしてどんな作品がこの素晴らしい栄誉を手にするのか今から楽しみですが、これからまた一年間、まだ出会っていない未読の傑作たちとの邂逅を楽しみながら、つらつらと感想を綴っていこうと思います。

長いレポートとなりましたが、最後までお読み頂きありがとうございました。

これからもどうか、素晴らしい作家さん、素晴らしい本格ミステリ、素晴らしい読者の方々とたくさん出会えますように。







*この記事の内容に関する責任等は全て音倉誓示に帰属します。誤り等発見されましたらご連絡下さいませ。
*この記事の無断転載等を固く禁じます。






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2009/05/21 23:45|第9回本格ミステリ大賞TB:0CM:8

コメント
楽しいです
お願い
携帯でしか見れない環境にあります。
あまりに長くなると読めなくなってしまうので、分割掲載にしてもらえないでしょうか。

さて、
氷川透は生きていた!(よかった)
依井貴裕と二人して投票より新作を書いてほしいものです!
気になるのは平石貴樹先生は出席してらっしゃいましたか?
サッサと東大教授を退官して本格の新作を発表してほしいです。
おまけ
東川篤哉先生には同世代にしか通用しないギャグ満載の新作を期待してます。
江守森江 #JalddpaA|2009/05/22(金) 00:13 [ 編集 ]

すみません
この記事が、という訳ではなくこのブログそのものが携帯で見る事を想定して作られていないため、申し訳ありませんがどうぞご容赦くださいませ。

平石さんという方は不勉強で存じ上げていないのですが、クラブ員では無いようですので、残念ながらあの場にはおられなかったのではないかと思います。
東川さんは別の記事で写真をアップします(^^)
音倉誓示 #-|2009/05/24(日) 01:41 [ 編集 ]


詳細なレポートありがとうございます!一般人がなかなか知ることのできない様子が伝わりましたよ♪
コンサ #-|2009/05/26(火) 07:33 [ 編集 ]


詳細なレポ、お疲れ様です!
流石、時間を掛けられただけあります。素晴らしい!

現地にいたのに、ああそうだった!と思いながら読みましたよ(笑)

「ミーハー編」も楽しみにしています。
みっつ #56biC/gA|2009/05/27(水) 12:45 [ 編集 ]

コンサさん
こちらこそ読んで頂いてありがとうございます!
東京や大阪に住んでいればああいうイベントに参加できる機会ももっと増えるのでしょうが・・・。
そういう意味ではコンサさんが少し羨ましい(^^)

あ、でもいつか北海道にも旅行したいなぁ(関係ない話ですみません)。
音倉誓示 #-|2009/05/29(金) 00:39 [ 編集 ]

みっつさん
いや~正直疲れました(^^;)
もし来年また参加できても、もうここまでは書かないかも(笑)

「ミーハー編」は慣れない画像の加工にかなり手こずりましたが、ようやくもうすぐアップできそうです。
みっつさんほどたくさんのサインは貰っていませんが、楽しんでもらえると嬉しいです(^^)
音倉誓示 #-|2009/05/29(金) 00:44 [ 編集 ]

おつかれさまでした~
何とも詳細なレポート!
本当におつかれさまでした!

音倉さんのミステリ愛がひしひしと伝わって参りました。
それにしても、もう参加者の先生方を眺めているだけでも興奮してしまいそうですね。

結果については妥当っぽくも思うものの、本屋さんで眺めていると、湊かなえ先生の「告白」の注目度がとても高い気がするので、最終候補にも挙がっていないことに、本格ミステリ大賞の独自性を感じるような、そうでもないような^^;(←ケチをつけているわけではないw)
FLIP #X6AIgIjQ|2009/05/30(土) 11:07 [ 編集 ]

FLIPさん
いや~いま思い出してもついつい顔がニヤけてしまうぐらい幸せな一日でした(^^)
「ミーハー編」も先程ようやくアップできましたので、そちらもよろしくお願いします!

「告白」は本屋大賞に選ばれる前から私もこのブログでベタ褒めしていますが、「本格ミステリ」とはちょっと違うでしょうね。
個人的には「本格ミステリ大賞」の注目度が低すぎるのが悲しいので何とかしたいのですが、やはり本屋大賞などと違って「マニア向け」の印象が強いので難しいところです。
本屋大賞は実は初期の頃から積極的に関わっていたのですが、最初の頃は「注目を浴びていない隠れた良作を発掘する」というコンセプトだったのが、参加者(本屋で働いていればアルバイトでも選考に参加できる)が増えるにつれて、「すでに売れている本を更に売る」ような受賞作が増えてきて、それが面白くなくて数年前から参加を辞めてしまいました。
まあ完全に大多数の投票で決めていますので、人気の作品に票が集まるのは仕方のない事ではあるのですが・・・。
音倉誓示 #-|2009/06/01(月) 00:56 [ 編集 ]

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