~愛すべき「本格ミステリ」の世界~

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音倉誓示(Otokura Seiji)

Author:音倉誓示(Otokura Seiji)
魅力的な謎。論理的な解決。そして少しの遊び心♪
「本格ミステリ」の魅力が少しでも多くの人に伝わりますように。
元、某地方書店チェーンの店長。
九州在住。

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赤い月、廃駅の上に (幽BOOKS)赤い月、廃駅の上に (幽BOOKS)
(2009/02/04)
有栖川有栖

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赤い月の光----。それは邪気を招く不吉な月。鬼月が出た夜は、異界への扉が口をあける…。17歳の引きこもりの青年が、クロスバイクで旅に出た。四日目にある町の廃線跡の駅舎に辿り着き、野宿をする。そこに現れた鉄道忌避伝説を追う30代の鉄ちゃんライターの佐光。空に赤い月が出ているのを見た青年は不気味さを振り払おうとダベり始める。深夜に差しかかるころ、佐光はトイレに行くため駅舎を出る。それを見計らったかのように、赤い月はますますその光を増し…。怪談専門誌『幽』に連載された8編に加え、他誌に発表された2編を加えた初の怪談集、堂々刊行。

突然ですが、妻のつわりがピークのため、このところ帰宅後や休日は家事に追われてほとんどパソコンの前に座れていません。

掃除・洗濯・料理・子育て・etc・・これだけの事を普段日常的にこなしている妻はやはりすごい。

感謝感謝です。

新しい命は現在身長「7㎜」。

大切に育てていきたいと思います。


と言う事で(10日以上前ですが)有栖川有栖さんの鉄道怪談短編集「赤い月、廃駅の上に」(メディアファクトリー)を読みました。

有栖川さんの「ミステリではない小説」、どうなんでしょう。


「夢の国行き列車」

愛知万博〈愛・地球博〉のポスターを見て、幼き日の大阪万博を思い出す主人公。

当時熱狂的な万博少年だったという6歳年上の上司は、家庭内の問題などを抱えながらもいつも大阪万博の楽しい思い出を胸に生きています。

そんな上司がある日突然姿を消し・・。


相変わらず大阪の地名・駅名が次々と出てきて関西の人間以外には分かりづらいですが・・なんとなく寂しいストーリーでした。

それにしても有栖川さんって、この「6歳年上の上司」と同い年ですよね。

かなり著者自身の体験が反映されていそうな作品でした。


「密林の奥へ」

異国の地で放浪の旅をしている24歳の主人公。

いつ来るか分からない列車を簡易宿泊所で待っている間に、あるおしゃべり好きな中年の行商人と仲良くなり、その行商人は「密林の奥へ分け入って刺激的な体験がしたい」と望む主人公に興味深い話を教えてくれます。

曰く――「K***へ向かうなら、W***で乗り換えて西へ向かうといい。そのまま奥へ奥へ進んで行けば、“空の鯨”と呼ばれるとてつもない大きな鳥に出会えるだろう」。

言われたとおりのルートで密林の奥へ向かった主人公。

持っている地図には載っていない、発音すら出来ない駅に辿り着き、そこから更に、1週間に1本という列車に乗り換え密林の奥へ奥へと進んでいきます。

道中では甘い樹液の匂いが窓から流れ込み、張り出した植物は車体を打ち、密林の奥の闇では獣の目が妖しく光り、禍々しい鳥の声が飛び交う中で毒々しい花が咲き乱れ・・。

そしてついに辿り着いた土地で主人公が目にしたのは・・。


う~ん、げにすさまじき森の生命力。



「テツの百物語」

6月半ば、じめじめした夜の事。

鉄道ファン向けのウェブサイトで知り合った5人は「鉄道怪談のオフ会」をやる事にします。

百物語さながらに、1人の話が終わるたびに蝋燭を1本づつ消していき、最後1本が消えたその時――。


ラスト1行は、さすが筋金入りの「テツ」ならではでした。


「貴婦人にハンカチを」

気まぐれな旅の途中、その黒光りする優美な姿から<貴婦人>と呼ばれているC57型<SLばんえつ物語号>に乗ってみた、23歳の英嗣。

意外にすいていた車内で4人掛けのボックス席に座った英嗣ですが、斜め向かいの席に、30代前半とおぼしき品のある女性―まさに<貴婦人>と呼ぶにふさわしい―が座ってきます。

いまひとつ会話が弾まないまま車窓を眺めていると、沿線にいる人々が走り去る汽車に手を振ってきます。

そして、小学校の教諭をしているという貴婦人が唐突に語り始めた話は・・。


切なくて、いい話でした。

最後の会話もニクい。


「黒い車掌」

目的の無い旅に出ていた梢子は、電車の中で車掌がだんだん黒くなっていくのを目撃します。

最初は青い制服に身を包んでいたはずの車掌。

いつのまにか制服が少しずつ黒くなり、制帽の庇は顔に黒い影を落とし、ついにはその全身の輪郭さえもぼやけてきます。

そして、停車する駅で、あるいは車内で次々と姿を現す、梢子の大切な人たち。

そう、それはあくまで「偶然」の出来事・・。


そしてあまりに辛い結末でした。


「海原にて」

大海原を航海中の船上で、船長や研究員たちとの会食に招待されたジャーナリストのサクラ。

研究員のローゼンタールがエドガー・アラン・ポーの作品を話題に出したのを皮切りに、奇談の蒐集家だという船長が海にまつわる数々の怪談を披露しはじめます。

――「生への執着は、人だけが持つものでもない。」

甲板に出たサクラが海上で目撃したものは・・。


スケールの大きな怪談でした。


「シグナルの宵」

隠れ家めいた場末のバー<シグナル>。

忙しかった仕事がやっと一区切りつき、朋美は2カ月ぶりにこの行きつけのバーを訪れます。

店内ではいつもの常連たちが顔をそろえていますが、話題は自然と先日鉄道自殺した元常連客「大庭さん」の話になってしまいます。

そこへ突然姿を現した「大庭さん」と瓜二つの男。

本人は双子の弟だと言いますが・・。


この短編集の中では割とミステリー色の濃い1作でした。

しかし読み終わった時には思わず全身に鳥肌が・・。


余談ですが、作中の「推理作家」と「ミステリー作家」についての会話はちょっと興味深かったです(それさえもちょっとした伏線になっている所はさすが有栖川さん!)。


「最果ての鉄橋」

そこは「最果ての駅」、人が最後に辿り着く場所―。

三途の川を舟で渡っていたのは大昔の話。

人口増加・死者の増加にともない小船から蒸気船、大型フェリーへと変遷し、数年前から鉄道に切り替わったとの事(笑)。

臨死体験をして、ここに来たのは2度目というお婆さんの話によれば、鉄橋で三途の川を渡る前に何とか引き返せば生き返ることが出来るといいます。

列車は鉄橋にさしかかり彼岸に向かって走り続けますが、どこの世界にも手抜き工事をする悪徳業者が・・。


ブラックユーモアたっぷりで楽しめました。


「赤い月、廃駅の上に」

1年生の秋に高校に行かなくなり毎日ぶらぶらしていた主人公は、5月半ば、自転車を使った1週間の旅に出ます。

観光スポットとなっている廃駅で野宿することにした主人公。

たまたま「鉄道忌避伝説」について調べているという鉄道好きのフリーライターも居合わせ、共に待合室で野宿することにします。

しかし鉄道というのは「邪気が吹き込みやすくなる異界への扉」、ましてや空にはほんのりと赤い月が―。


表題作だけあって、「いかにも」なストレートな怪談でした。


「途中下車」

帰宅途中、時々降りた事のない駅で途中下車し、見知らぬ街の散策を楽しむ47歳バツイチの主人公。

9年前に離婚しその翌年に急逝した元奥さんは有名な美人女優で、その噂を知ってか、会社では今でも女性社員に人気があります。

結婚していた当時、2人だけの秘密の言葉だった「アタシャール」。

最近その言葉が幻聴として聞こえ始めた主人公なのですが、通勤中の電車の窓ごしに、突然「アタシャール」という看板が目に飛び込んできます。

何度も電車に乗って、ついにその「アタシャール」の看板の場所を探し当てるのですが・・。


切ない。

とにかく切ない。

有栖川有栖さんの「本格ミステリ」はもちろん大好きですが、一度この人の書いた「恋愛小説」を読んでみたい。

幽霊刑事」といいこの「途中下車」といい、ミステリファン以外にもぜひ読んで貰いたいです。


ファンのひいき目はあるかもしれませんが、やはり有栖川有栖さんは「本格ミステリ作家」としてだけではなく「小説家」としてもいい作品を書かれる作家さんだと思います。

この文章で、なおかつ端正な本格ミステリを書かれたのでは、そりゃあファンが増えて当然ですね。

未読の作品もまだ少し残っていますので、いずれ近いうちにそれらも読んでしまいたいです。



さて、しばらくブログを休んでいたので記事を書けていない読了本が積み上がって来ています。

仕事も、家事も、ブログも、頑張るぞっと。







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2009/03/24 03:25|・有栖川有栖TB:1CM:2

コメント

怪談でもさすがのいい作品集でした。
奥様のつわり、軽くなるといいですね。

トラックバックさせていただきました。
藍色 #-|2009/04/26(日) 03:05 [ 編集 ]


トラックバッックありがとうございました。
さすが有栖川さんでした。

妻のつわりは少しずつ落ち着いてきたようです(^^)

こちらからもトラックバックさせていただきました。
音倉誓示 #-|2009/04/27(月) 23:10 [ 編集 ]

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赤い月、廃駅の上に 有栖川有栖
それは邪気を招く不吉な月。鬼月が出た夜は、異界への扉が口を開ける…。 戦慄の表題作のほか、感動あり、涙ありのじんわりやさしく効くテツ...
粋な提案 2009/04/26(日) 02:57

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