~愛すべき「本格ミステリ」の世界~

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音倉誓示(Otokura Seiji)

Author:音倉誓示(Otokura Seiji)
魅力的な謎。論理的な解決。そして少しの遊び心♪
「本格ミステリ」の魅力が少しでも多くの人に伝わりますように。
元、某地方書店チェーンの店長。
九州在住。

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2010/03/13 02:14|・著作リスト更新履歴TB:0CM:0

 

霧舎巧傑作短編集 (講談社文庫)霧舎巧傑作短編集 (講談社文庫)
(2007/04/13)
霧舎 巧

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名探偵・後動悟が密室の列車内で華麗なアリバイ崩しを披露する「手首を持ち歩く男」。師・島田荘司の人気シリーズから御手洗潔と石岡和己の名コンビが登場する「動物園の密室」。他に《あかずの扉》研究会と《霧舎学園》のメンバーも集結し、オールスター探偵がハイレベル推理を連発する、珠玉のミステリ短編集!



「手首を持ち歩く男」

東京から関西方面に向かう新幹線の中、グリーン車の個室で対峙している二人の男。

二人の間には不穏な空気が漂っています。

それと前後して車内で姿を見せていたのは、絵描きを名乗る「手首を持ち歩く男」と、ビュッフェで後動悟に声を掛けてきた自称「命を狙われている男」。

やがて件の個室からは惨殺死体が発見されますが、果たして被害者は、そして犯人は何者なのか。

同じ場面が繰り返されるプロローグとエピローグの構成が秀逸です。


「紫陽花物語」

「手首を持ち歩く男」と同じく、霧舎巧さんがまだプロの作家としてデビューする前の作品だそうです。

お婆さんの着ている着物、盗撮魔の撮った写真、紫陽花の茎の切り口、家具屋のトラック、いくつもの事象を論理的に結びつけて、後動悟は一つの真実の可能性を導き出します。

読みながら「ちょっと強引じゃない?」と思っていたら、いやはや、そんなオチで来ましたか。


「動物園の密室」

島田荘司氏から「御手洗潔のパスティーシュを書きませんか」と誘われて生まれた作品。

動物園を舞台に、御手洗と石岡君が迷子の子供たちと触れ合いながら(笑)、不思議な密室殺人の謎に挑みます。

使われているトリックもいかにも「御手洗もの」に出てきそうなトリックで、この作品を書いたのは実は霧舎巧ではなく島田荘司本人だと言われても何の疑いも抱かないでしょう。

果たして犯人の脱出方法は?

そして、御手洗潔が到底許すことの出来ない凶器とは?


「まだらの紐、再び」

二階堂黎人さん編の「密室殺人大百科(上)」(講談社文庫)に収録されていた一篇です。

覚醒剤中毒の女子大生が寮の自室で変死し、時を同じくして、管理人室には殺害された上に手首から先を持ち去られている管理人の死体が。

「まだらの紐」と言えば、もちろん元ネタは有名すぎるアレですが、霧舎さんはそこにいくつもの捻りを加えて、非常にアクロバティックな作品に仕上げています。

後動悟と真村真一警部が初めて出会った《沼毒蛇事件》としても興味深い一篇です。


「月の光の輝く夜に」

これまでの収録作とは打って変わって、とても幻想的な恋愛譚です。

しかし、もちろんミステリでもあります。

ジョーが満月の夜に出会った不思議な少女、月子。

ジョーにとって初めての恋、そして初めての失恋。

食い違った発言や行動を繰り返す月子には、一体どんな秘密があるのでしょう?

そして間違いなく心を通わせていたにも関わらず、別れを告げた月子の真意は?

いまひとつスッキリしない終わり方ですが、その理由は次の収録作で、意外な人物によって明らかにされます。


「クリスマスの約束」

この短編集のボーナストラック的な位置づけの作品でもあり、霧舎巧という作家の真髄を見る事の出来る作品です。

描かれるのは、あるクリスマスの、《あかずの扉》研究会メンバーの日常の風景。

しかしながら、それぞれバラバラの年代に、様々な媒体に発表されたここまでの6編の短編が、この作品で一気に一本の線で結ばれます。

あの作品の登場人物が、そしてあの作品の何気ない一言が、これまでに張られたすべての伏線がこの一点に集結します。

まさに“伏線の魔術師”霧舎巧、恐るべし!!

この驚きを芯から味わうためにも、出来ればこの短編集は「《あかずの扉》研究会シリーズ」を(そして出来れば「霧舎学園シリーズ」も)読んだ上で手に取った方が、より幸せかもしれません。


霧舎さんの作品群は、いつもどこかで繋がっています。

この「霧舎巧傑作短編集」を読み終えた私は、著者の言葉にいざなわれるままに早速「マリオネット園」を読み返しました。

・・・結果は、言うまでもないですね。

ミステリの愉しみ、ここにありです。







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2010/03/13 00:56|・霧舎巧TB:0CM:0

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