~愛すべき「本格ミステリ」の世界~

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音倉誓示(Otokura Seiji)

Author:音倉誓示(Otokura Seiji)
魅力的な謎。論理的な解決。そして少しの遊び心♪
「本格ミステリ」の魅力が少しでも多くの人に伝わりますように。
元、某地方書店チェーンの店長。
九州在住。

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造花の蜜造花の蜜
(2008/11)
連城 三紀彦

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造花の蜜はどんな妖しい香りを放つのだろうか…その二月末日に発生した誘拐事件で、香奈子が一番大きな恐怖に駆られたのは、それより数十分前、八王子に向かう車の中で事件を察知した瞬間でもなければ、二時間後犯人からの最初の連絡を家の電話で受けとった時でもなく、幼稚園の玄関前で担任の高橋がこう言いだした瞬間だった。高橋は開き直ったような落ち着いた声で、「だって、私、お母さんに…あなたにちゃんと圭太クン渡したじゃないですか」。それは、この誘拐事件のほんの序幕にすぎなかった―。

「第9回本格ミステリ大賞」候補作の一つ、連城三紀彦さんの「造花の蜜」を読みました。

連城さんの作品は何作かは読んだことがありますが、いわゆる新本格を中心に読んでいる私にとっては今一つなじみの薄い作家さんでもあります。


資産家である歯科医の「山路将彦」と離婚し、5歳の「圭太」を連れて実家で暮らしている「香奈子」。

ある日、幼稚園の担任の先生から「圭太くんがスズメバチに刺されて救急車を呼んだので、お母さんも病院に向かって欲しい」という電話が掛かってきます。

実家の工場の従業員が運転する車で急いで病院に向かっていた香奈子でしたが、電話の内容を不審に思い途中で幼稚園に連絡をしてみると、担任は「そんな電話はしていない」と言うばかりか「圭太くんはさっきお母さんが車で迎えに来て連れていかれたじゃないですか」と、ありえない事を口走ります。

その後誘拐犯から連絡が入りますが、身代金の金額といい奇抜な受け渡し方法といい、何か奇妙な事ばかり。

そのうえ香奈子も、圭太に関して何か秘密を抱えている様子。

犯人は一体何が目的で誘拐事件を起こしたのか?

そしてその正体は?


この作品は、被害者側の物語、犯人側の物語、後日譚、と大きく分けて3つのパートで構成されていますが、まずはこの誘拐事件の裏側で起こっていた意外な真相と、その複雑なプロットを丁寧に組み上げた作者の手腕に舌を巻きました。

しかしながら、全7章からなるこの作品の最終章は残念ながら私には蛇足にしか思えませんでした。

それまでの物語を逆手に取って更にもうひと捻り、と考えれば贅沢なおまけだったのかも知れませんが、よく出来た作品だけに第6章にあたる「罪な造花」でスパッと物語を終えていた方が、一冊の長編としてはまとまりが良かった気がします。

いくつかの思わせぶりな伏線が未回収のまま終わったのも少し残念に感じました。

ただし圭太の誘拐に関して犯人が仕掛けた大きなトリックは非常に素晴らしかったと思いますし、ある程度事件の真相が明らかになった段階で序盤の香奈子と圭太の電話での会話を読み返した時の驚きはまさしくミステリを読む愉しみそのものでした。

また、まるで蜂を引き寄せる蜜のように周囲の人間を惹きつけるあの人物も非常に魅力的に感じました。


何かの賞を取ってもおかしくない良く出来たサスペンスフルな作品だとは思いますが、ただ個人的には、「本格ミステリ大賞」という賞のイメージから考えるとこの作品が持つ空気は少し違うかな、という気がしました。







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2009/05/03 02:08|・連城三紀彦TB:0CM:4

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