~愛すべき「本格ミステリ」の世界~

プロフィール 

音倉誓示(Otokura Seiji)

Author:音倉誓示(Otokura Seiji)
魅力的な謎。論理的な解決。そして少しの遊び心♪
「本格ミステリ」の魅力が少しでも多くの人に伝わりますように。
元、某地方書店チェーンの店長。
九州在住。

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「森江春策シリーズ」
 ・殺人喜劇の13人(デビュー作)・・・東京創元社('90)、講談社文庫('98)、創元推理文庫(未刊、'15年1月以降発売予定)
 ・歴史街道殺人事件・・・トクマノベルス('95)、徳間文庫('99)
 ・時の誘拐・・・立風書房('96)、立風ノベルス('01)、講談社文庫('04)
 ・地底獣国(ロスト・ワールド)の殺人・・・講談社ノベルス('97)、講談社文庫('01)
 ・探偵宣言 森江春策の事件簿・・・講談社ノベルス('98)、講談社文庫('05)
 ・十三番目の陪審員・・・角川書店('98)、角川文庫('01)、創元推理文庫('08)
 ・不思議の国のアリバイ・・・青樹社('99)、光文社文庫('03)
 ・怪人対名探偵・・・講談社ノベルス('00)、講談社文庫('04)
 ・和時計の館の殺人・・・光文社カッパノベルス('00)、光文社文庫('04)
 ・時の密室・・・立風書房('01)、講談社文庫('05)
 ・赤死病の館の殺人・・・光文社カッパノベルス('01)、光文社文庫('05)
 ・グラン・ギニョール城・・・原書房('01)、創元推理文庫('06)
 ・三百年の謎匣・・・早川書房('05)、角川文庫('13)
 ・少年は探偵を夢見る 森江春策クロニクル・・・東京創元社('06)
 ・千一夜の館の殺人・・・光文社カッパノベルス('06)、光文社文庫('09)
 ・裁判員法廷・・・文藝春秋('08)、文春文庫('10)
 ・彼女らは雪の迷宮に・・・祥伝社('08)、祥伝社文庫('12)
 ・綺想宮殺人事件・・・東京創元社('10)
 ・七人の探偵のための事件・・・早川書房('11)
 ・大公女殿下(プリンセス)に捧げる密室・・・祥伝社('12)
 ・時の審廷・・・講談社('13)
 ・異次元の館の殺人・・・光文社('14)

「モダン・シティシリーズ」
 ・殺人喜劇のモダン・シティ・・・東京創元社('94)、講談社文庫('00)
 ・少女探偵は帝都を駆ける・・・講談社ノベルス('09)

「明清疾風録シリーズ」
 ・明清疾風録 夢・鄭成功戦記①・・・学習研究社('95)
 ・明清疾風録 夢・鄭成功戦記②・・・学習研究社('96)
 ・明清疾風録 夢・鄭成功戦記③・・・学習研究社('97)

「自治警特捜シリーズ」
 ・死体の冷めないうちに・・・双葉社('98)、双葉文庫('01)
 ・メトロポリスに死の罠を・・・双葉社('02)、双葉文庫('04)

「ネオ少年探偵シリーズ」
 ・妖奇城の秘密・・・学習研究社('04)
 ・電送怪人・・・学習研究社('05)
 ・謎のジオラマ王国・・・学習研究社('05)

「ノンシリーズ」
 ・保瀬警部最大の冒険・・・カドカワノベルズ('94)
 ・名探偵博覧会Ⅰ 真説ルパン対ホームズ・・・原書房('00)、創元推理文庫('05)
 ・名探偵Z 不可能推理・・・角川春樹事務所ハルキ・ノベルス('02)
 ・金田一耕助VS明智小五郎・・・原書房('02)、創元推理文庫('07)、角川文庫('13)
   (「名探偵博覧会Ⅱ 明智小五郎対金田一耕助」(創元推理文庫)に書き下ろし1篇を加えて改題)
 ・殺しはエレキテル 曇斎先生事件帳・・・光文社カッパノベルス('03)、光文社文庫('07)
 ・紅楼夢の殺人・・・文藝春秋('04)、文春文庫('07)
 ・切断都市・・・実業之日本社('04)
 ・探偵と怪人のいるホテル・・・有楽出版社('06)
 ・五瓶劇場 からくり灯篭・・・原書房('07)
 ・迷宮パノラマ館・・・有楽出版社('07)
 ・月蝕姫のキス・・・理論社('08)
 ・黄金夢幻城殺人事件・・・原書房('11)
 ・スクールガール・エクスプレス38・・・講談社('12)
 ・スチームオペラ 蒸気都市探偵譚・・・東京創元社('12)
 ・奇譚を売る店・・・光文社('13)
 ・金田一耕助VS明智小五郎 ふたたび・・・角川文庫('14)
 
「共著・編著・アンソロジー等」
 ・妖異百物語 第一夜(鮎川哲也・芦辺拓編)・・・出版芸術社('97)
 ・妖異百物語 第二夜(鮎川哲也・芦辺拓編)・・・出版芸術社('97)
 ・鮎川哲也読本・・・原書房('98)
 ・本格ミステリーを語ろう!海外編・・・原書房('99)
 ・贋作館事件・・・原書房('99)
 ・密室殺人大百科(上)(「疾駆するジョーカー」所収)・・・原書房('00)
 ・本格推理マガジン 絢爛たる殺人・・・光文社文庫('00)
 ・本格推理マガジン 少年探偵王・・・光文社文庫('02)
 ・死神と雷鳴の暗号(「フレンチ警部と雷鳴の城」所収)・・・講談社ノベルス('02)、講談社文庫('06)
   (「本格ミステリ02」(講談社ノベルス)から文庫化に際し分冊・改題された第2弾)
 ・全席死定 鉄道ミステリー名作館・・・徳間文庫('04)
 ・深夜バス78回転の問題(「78回転の密室」所収)・・・講談社ノベルス('04)、講談社文庫('08)
   (「本格ミステリ04」(講談社ノベルス)から文庫化に際し改題)
 ・あなたが名探偵(「読者よ欺かれておくれ」所収)・・・東京創元社('05)
 ・密室と奇蹟 J・D・カー生誕百周年アンソロジー・・・東京創元社('06)
 ・探偵Xからの挑戦状!(「森江春策の災難」所収)・・・小学館文庫('09)
 ・法廷ジャックの心理学・・・講談社文庫('11)
 ・江戸川乱歩に愛をこめて・・・光文社文庫('11)
 ・この謎が解けるか? 鮎川哲也からの挑戦状!①・・・出版芸術社('12)
 ・この謎が解けるか? 鮎川哲也からの挑戦状!②・・・出版芸術社('12)
 ・鉄人28号 THE NOVELS・・・小学館クリエイティブ('12)
 ・名探偵シャーロック・ホームズ(10歳までに読みたい世界名作 6) コナン・ドイル/著 芦辺拓/編訳・・・学研教育出版('14)


「コミック化」
 ・森江春策の事件簿 赤死病の館の殺人 宗美智子/画・・・秋田書店サスペリアミステリーコミックス('03)
 ・名探偵 危険の報酬 芦辺拓他/著 宗美智子他/画・・・秋田書店廉価版コミックス('13)
 

'14.11.26 改訂4版
太字は私の既読作品です。)


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2014/08/06 02:09|芦辺拓著作リストTB:0CM:0

 

裁判員法廷裁判員法廷
(2008/02)
芦辺 拓

商品詳細を見る
有罪、それとも無罪?被告人の運命は、あなたたち六人に委ねられた。いわくありげな裁判員たち、二転三転する評議、そして炸裂する究極のどんでん返し!裁判員制度のすべてがわかる、傑作リーガルサスペンス。

先日の「探偵Xからの挑戦状!”森江春策の災難”」にタイミングを合わせた訳ではありませんが、「第9回本格ミステリ大賞」候補作の一つ、芦辺拓さんの「裁判員法廷」(文藝春秋)を読みました。

いよいよ来月から裁判員制度がスタートする訳ですが、かなり賛否両論あるこの新制度、個人的には「実際にやってみないと分からない」というのが正直な感想ですが、これによって人の一生が左右される訳ですから無関心ではいられません。

最近では、「やっていない事の証明」が難しいがゆえに多くの冤罪が生まれていると言われている痴漢事件に最高裁で逆転無罪の判決が出たり(今までであればせいぜい「差し戻し」ぐらいではなかったかと思います)、DNA鑑定の精度向上により次々に過去の誤審が判明するなど、色々と話題の多い「裁判」ではありますが、実際に自分が裁判員になったらどうなるのかは(私を含め)意外にあまり知らない人が多いのではないでしょうか。

という事で「本格ミステリ」であると同時に「シミュレーション小説」でもあるこの芦辺拓さんの「裁判員法廷」、非常に興味深く読みました。

ちなみにこの3つの作品が収められた中編集でそれぞれの主人公を務めるのは、いずれも思いもかけず裁判に関わることになった「あなた」自身です。


「審理」

呼出状に従って裁判所を訪れた「あなた」は、傍聴席ではなく――もちろん証言台でも、被告や原告の席でもなく――職業裁判官と同じ並びに用意された裁判員用の座席に腰を下ろします。

裁判員である「あなた」の役目は、職業裁判官とともに法廷での証言や証拠を十分に吟味し、被告人の有罪・無罪を、そして有罪の場合は刑の軽重までも判断することです。


まず今回の事件。

被告人「有賀誠彦」は、あるビルの3階にある「鷺坂コンサルティング」の事務所で、この事務所のオーナーである「鷺坂太一」を殺害したという「殺人」の罪で起訴されています。

検事は、社長秘書のようなスーツを着た愛らしい女性「菊園綾子」。

それに対し被告人の有賀、および彼の弁護人である「森江春策」は、被害者には指一本触れていないと「無罪」を主張しています。

様々な人物が証言台に立ちますが、彼らに対する森江の質問は何か的の外れたものばかり。

一見事件に関係なさそうな話や、時には被告人を不利にしてしまうような証言を次々に引き出していきます。


「赤いてのひら」「古いモノクロ映画のワンシーン」など一見何の繋がりもない数々の事象が、最後には綺麗に真相を照らし出す一筋の光となるあたりはまさしく正統的な本格ミステリであり、菊園検事と森江春策の対決としてもとても楽しめましたが、本来主役であるはずの「あなた」が単なる傍観者のような立場のまま物語が終結したのは、この作品の趣旨から考えると少し物足りない印象もありました。


「評議」

今回の主人公も、一般人でありながら「裁判員」として裁判所からの呼び出しを受けた「あなた」です(ただし第1話の「審理」とは別人)。

今回も被告人の「無罪」を主張している弁護人の「森江春策」ですが、なんと用意していた証人が法廷に姿を現さないという異例の事態に追い込まれています。

第1話「審理」は、検事と弁護人のやり取りを裁判員である「あなた」が見ているシーンが中心でしたが、今回は弁護側の証人が来ないまま閉廷し、物語は職業裁判官3名と一般の裁判員6名が事件について話し合う「評議室」でのやり取りを中心に語られます。

6名の裁判員は年齢も職業もバラバラですが、今回の事件については職業裁判官たちが被告人は「有罪」であるという印象を持つ中で、裁判員の大半は――弁護人「森江春策」の最終弁論になにかしらの影響を受けたのか――それぞれにわずかながら検察側の主張に対して疑問を持っています。


被害者が死に至ったアレについては私の知識不足が原因であまり驚きは得られませんでしたが(「意外な真相」と言うよりは「未知の殺人装置」を引き合いに出されたような印象でした)、ある裁判員の正体(ちょっと大げさかな)についての伏線や、評議の中で少しづつ真相が明らかになっていく過程は存分に楽しめました。


「自白」

今回の裁判では、被告人が罪を認めているにもかかわらず弁護人(森江春策)は「無罪」を主張するという、これまた異例のストーリーが展開されます。

今回も被告人を裁くのは3名の職業裁判官と6名の一般裁判員。

菊園検事は証人として、事件当日に被害者の自宅を訪れた5名のうち被告人を除いた4名、そしてさらに事件当日に被害者と電話で話をした不動産会社の営業マンや事件当日に現場付近を巡回していた警察官などを召喚します。

呼出状に従いこの場に足を運んだ「あなた」は、彼らのやり取りや証言をどのように受け止めるのか。



いや~、見事にやられました。

正直なところ「審理」「評議」は、それなりに面白くはあるものの今一つ物足りなさも感じていたのですが・・・そう来ましたか

非常にあざとくはありますが、決してアンフェアではない。

この辺りの匙加減というか「物語の”見せ方”」はさすがとしか言いようがありません。

もちろん単体で読んでもよく練られた作品ではありますが、やはりこの中編集の最終話に配置される事で最大限の輝きを放つ作品だと言えるでしょう。

ミステリを読む幸せを味あわせて頂きました。


別の記事でも少し触れましたが、個人的には――例えば現在「ミステリーズ!」に連載中の「綺想宮殺人事件」のような――あまりにペダンティックな作品は残念ながら少し苦手です。

私がヴァン・ダインの諸作を世間の評価ほどには楽しめなかったのもそれが原因かも知れません(いずれ好みは変わるかもしれませんが)。

ただ、なんだかんだ言ってもやっぱり芦辺拓さんはいいミステリを書く作家さんなのだな、という事は今回の「裁判員法廷」や「森江春策の災難」で思い知らされましたので、まだ未読の作品群もきちんと読んで行こうという気持ちになりました。



最後に、この本の「あとがき」で触れられていた「本格ミステリにおける”現実への切り込み”」に関しては少し考えさせられる所もありました。

本格ミステリとは、社会派とは、などと言い始めればいくら書いても語りつくせませんが、ミステリ――中でもとりわけ「本格ミステリ」――に誇りを持ち、真摯な姿勢でそれに向き合う芦辺拓さんには非常に好感が持てました。

セカイ系、などと呼ばれる作品を批判するつもりはありませんし「メフィスト」などで私も普通に楽しみながら読んでいたりしますが、やはり私は「大人の上質な知的遊戯」としての端正な「本格ミステリ」が一番好きだな~、などと一人で勝手に納得してしまいました。







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2009/04/30 11:15|・芦辺拓TB:1CM:7

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