~愛すべき「本格ミステリ」の世界~

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音倉誓示(Otokura Seiji)

Author:音倉誓示(Otokura Seiji)
魅力的な謎。論理的な解決。そして少しの遊び心♪
「本格ミステリ」の魅力が少しでも多くの人に伝わりますように。
元、某地方書店チェーンの店長。
九州在住。

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福家警部補の挨拶 (創元推理文庫)福家警部補の挨拶 (創元推理文庫)
(2008/12)
大倉 崇裕

商品詳細を見る
本への愛を貫く私設図書館長、退職後大学講師に転じた科警研の名主任、長年のライバルを葬った女優、良い酒を造り続けるために水火を踏む酒造会社社長―冒頭で犯人側の視点から犯行の首尾を語り、その後捜査担当の福家警部補がいかにして事件の真相を手繰り寄せていくかを描く倒叙形式の本格ミステリ。刑事コロンボ古畑任三郎の手法で畳みかける、四編収録のシリーズ第一集。

東京創元社の隔月刊誌「ミステリーズ!」掲載時に全て読んでいるため、購入がついつい後回しになっているうちに文庫になってしまった、大倉崇裕さんの「福家警部補の挨拶」です。

冒頭でまず犯人の視点から事件の状況を描き、その後主人公(福家警部補)がその犯人を追いつめるまでを描いた「倒叙ミステリ」。

刑事コロンボ」も「古畑任三郎」も大好きな私にとっては、たまらない一冊です。

収録作品は4作。


「最後の一冊」(雑誌掲載時のタイトルは「本を愛した女」)

記念すべき第1話の犯人は、私設図書館の女性館長である、「天宮祥子」です。

いつもネタバレに細心の注意を払いながら記事を書いているので、いきなり犯人の名前を書けるのは何かすごく気持ちいいですね


天宮は、自分が館長を務めるこの経営難の図書館をなんとか存続させようと日々奮闘しているのですが、この図書館を創設した、故「江波戸康祐」の息子であり、現オーナーの「江波戸宏久」は図書館を閉鎖して売り飛ばそうとしています。

そこで天宮は、「貴重な本を盗まれた振りをして保険金をだまし取る」という架空の儲け話をでっちあげて宏久を真夜中の図書館に呼び出し、隙をついて分厚い本で康祐を殴り殺します(殺せるものなのか?)

さらに天宮は、現場を「宏久が夜中に本を盗みに入って、誤って事故死した」ように見せかけます。


そして翌朝。

出勤した事務員によって死体が発見され、いよいよ「福家警部補」の登場です!

身長は152センチ、縁なしの眼鏡をかけ、髪はショート。

眉の上で切りそろえられた髪のせいでひどく幼く見えるが、30歳は超えているはずの小柄な女性。

それが「福家警部補」です!

いつも、表紙のすりきれた手帳に何事か書き留めながら、どんな小さな矛盾も見逃さずに徹底的に調査し、犯人を追いつめていきます。

今回は、合鍵、空調、手袋など、ちょっとした違和感や矛盾点から館長である天宮を疑い、最後にはその罪を暴きます。

その手際の鮮やかなこと!

世の中には「完全犯罪」などと言うものは中々存在せず、犯人は大抵何らかの不手際を残しています。

今回福家警部補が、犯人である天宮を追いつめた切り札は、天宮が「本を愛するがあまり」取った、ある行動でした。

見事!


「オッカムの剃刀」

今回の犯人は、城北大学理学部の講師である「柳田嘉文」。

もと科警研科学捜査部の主任で、カービング(復顔術)のエキスパートです。

柳田は、同じ城北大学の医学部准教授「池内国雄」から、「過去のある事」で脅迫を受けており、そのため、周到な計画を練り、強盗殺人に見せかけて路上で池内を撲殺します。

もちろん捜査に当たるのは、われらが「福家警部補」。

バッグの中の警察バッジが中々みつからず、とても警部補、というか警察関係者には見えないその風貌のため、現場に入ろうとするところを制服警官に制止されています

現場に駆けつけるや否や、血だまりの中に落ちている眼鏡、更には被害者の持ち物であるキーリングやタバコ、被害者の靴のすり減り方などから様々な事を読み取っていく福家警部補。

最後には、柳田が「犯人しか知りえない情報」を知っているということを見事に暴きだし、この、警察の捜査を知りつくした手ごわい犯人をついに観念させます。

それにしても、福家警部補が柳田を疑い始めたきっかけがまさかこんな理由だとは・・・まさに慧眼!


「愛情のシナリオ」

今回の犯人は、女優の「小野木マリ子」。

そして、睡眠薬で眠らされた上、一酸化炭素中毒による事故死に見せかけて殺害されるのは、料理番組「樂らくクッキング」でおなじみの女優「柿沼恵美」(←って何か聞いたことあるような・・・)です。

今回も、親指の火傷、ペットボトルの水、コンロの乾電池、ペットの餌など、ささいな事から犯人に目星を付け、じわじわと追い込んでいく福家警部補。

今回のエピソードでは、福家警部補の異常な映画マニアっぷりにも驚かされます。

犯人の隠された動機については予想通りの展開でしたが、福家警部補が最後にマリ子につきつけた、「犯行時、マリ子が現場にいた証拠」にはやられました。

うまいっ!

ただし、いくら1階部分が駐車場になっている家とはいえ、窓やドアに目張りをしたわけでもない一軒家で、排気ガスで中毒死するものなのでしょうか?

それだけ少し気になりました。


「月の雫」

今回の犯人は、生産量は少ないながら、手間暇かけて良質な日本酒を製造する蔵元「谷元酒造」の社長、「谷元吉郎」です。

殺害されるのは、機械醸造による粗悪な酒を大量生産しながらも、その強引なやり方で勢力を伸ばし続けている「佐藤酒造」の社長、「佐藤一成」。

佐藤から会社を乗っ取られそうになっている谷元は、真夜中、谷元酒造の蔵に佐藤社長をおびき出し、隙を見て、水を張った巨大なタンクの中に佐藤社長を突き落として殺害します。

佐藤社長が盗みに入って事故死した、と見せかけるあたりは、第1話の「最後の1冊」と同じパターンとも言えます。

今回も、免許証、握りつぶされた名刺、梅の開花と、些細な不審点から犯人を絞り、追いつめていく福家警部補。

捜査の途中、ウォッカと日本酒を大量に飲みながらも、涼しい顔をしてその酒豪ぶりを見せつけます。

祖父の代から続いている良質な酒を守りたい一心でその手を汚してしまった谷元も、ある意味では被害者なのかも知れません。

ただ今回も、水を張ったタンクに突き落としただけで殺害できるのか、というのが少し引っ掛かりました。

今回の被害者である佐藤社長は、運良く(?)落ちる途中にタンクの内部で頭を打ったため亡くなりましたが・・。

別にアラ探しをするつもりは無いのですが、非常に好きな作品集だけに余計に気になってしまいました。


回を追うごとに「福家警部補」の色々な一面が見えてくるこのシリーズ。

すでに掲載誌である「ミステリーズ!」(東京創元社)には第8話まで掲載されています(その後しばらく掲載が無いのが心配なのですが・・)。

コロンボの「うちのカミさんが・・」のような黄金パターンとまではいかないかも知れませんが、福家警部補も、「あと一つだけ」と言いながら3つも4つも質問をするあたりは、読んでいてついついニヤニヤしてしまいます

「倒叙」という特殊な形式を使っていることや、中盤の捜査の部分では次々に場面が入れ替わり淡々と進んでいくあたりは、もしかすると人によっては好みが分かれるかもしれません。

が、

私はこのシリーズは大好きです!

第5話以降が収録された2作目の発売を楽しみに待ちつつ(←今度はちゃんと単行本で買います)、また連載の再会を心待ちにしております。



追伸:ドラマの記事はこちら→NHK正月ドラマ「福家警部補の挨拶~オッカムの剃刀~」(大倉崇裕原作)を観ました。






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2008/12/29 23:55|・大倉崇裕TB:2CM:1

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