~愛すべき「本格ミステリ」の世界~

プロフィール 

音倉誓示(Otokura Seiji)

Author:音倉誓示(Otokura Seiji)
魅力的な謎。論理的な解決。そして少しの遊び心♪
「本格ミステリ」の魅力が少しでも多くの人に伝わりますように。
元、某地方書店チェーンの店長。
九州在住。

FC2カウンター 

最新記事 

カテゴリ 

月別アーカイブ 

RSSリンクの表示 

メールはこちらから 

名前:
メール:
件名:
本文:

ホーム 全記事一覧

 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--/--/-- --:--|スポンサー広告

 

あなたが名探偵 (創元推理文庫)あなたが名探偵 (創元推理文庫)
(2009/04/20)
小林泰三 霞流一 ほか

商品詳細を見る
蚊取湖の氷上で発見された死体の首には、包帯が巻きつけられていた。前日に、病院で被害者の男性と遭遇した慶子と美那は、警察からあらぬ疑いをかけられて―。泡坂妻夫「蚊取湖殺人事件」をはじめ、西澤保彦、小林泰三、麻耶雄嵩、法月綸太郎、芦辺拓、霞流一が贈る七つの挑戦状。問題編の記述から、見事に事件の真相を推理できますか?犯人当てミステリの醍醐味をあなたに。

2003年のVol.1から2004年のVol.8にかけて東京創元社発行のミステリ雑誌「ミステリーズ!」に掲載された犯人当て小説が1冊にまとまった作品集です。

「ミステリーズ!」は創刊号から定期購読していますので収録作品は全て既読なのですが、今回文庫になったという事もあり、思わず購入してしまいました。


「蚊取湖殺人事件/泡坂妻夫」

トップを飾るのは「ミステリーズ!創刊号」に掲載されたこの作品。

先日惜しまれつつこの世を去ってしまった、泡坂妻夫さんからの出題です。

蚊取山のゲレンデにスキーに来た「美那」と「慶子」ですが、初心者のくせに上級者向けのコースを滑っていた慶子は案の定足首を怪我してしまい、インストラクターの「村石」や地元の名士の息子「財津」らに連れられて「東ノホテル」の近くにある「小田切外科」という病院に行きます。

病院の受付では、「長沼」という自称小説家が診察料の支払いで事務員と揉めていましたが、それを横目に見ながら診察室に呼ばれた慶子は、名医小田切先生にタチマチ軟膏という薬を塗ってもらい、タチマチ足首の痛みが取れていきます(この辺りは泡坂さんらしいネーミングですね)。

物語の舞台となっている蚊取湖湖畔には東西に2つのホテルが建っており、湖の東側に建っているのがゲレンデに近い「東ノホテル」。

「小田切外科」もこの「東ノホテル」のすぐ近くです。

そして湖の西側に建っているのが、設備も二流でゲレンデからも遠い「西ノホテル」。

美那と慶子はこの「西ノホテル」に泊まっており、慶子が小田切外科に行った翌朝、蚊取湖の「西ノホテル」側の岸辺(凍った湖の氷の上)で「長沼」の他殺体が発見されます。

財津や村西、小田切先生やそこの看護師などは全員アリバイがあり、警察は美那と慶子を疑いますが・・・。

犯人の意図しない偶然があまり大きく介入するミステリは正直どうかなと思いますが、ユーモアのある文章といい、泡坂さんの作品というだけでつい許せてしまいます。


「お弁当ぐるぐる/西澤保彦」

二番手は、奇抜な設定ながらロジカルな作品の多い西澤保彦さんです。

う~ん、タイトルがいいですね。

被害者は56歳の「藤川光司」。

自宅のリビングで倒れており、どうやらキッチンのフライパンで何度も頭を殴られているようです。

被害者の手には本日付の讀賣新聞の朝刊が握られており、ミステリマニアらしい「江角刑事」は、これはダイイング・メッセージではないかと疑います。

第一発見者は保険勧誘員の「大和田鳴子」。

他に容疑者として、被害者の妻で、リストラされた夫に代わり勤めに出て家計を支えていた「藤川小夜」、光司と小夜の一人息子で両親宅から徒歩10分の所に住んでいる「藤川充」とその妻の「藤川修子」などが挙がってきます。

しかも調べていくうちに、被害者宅の裏の蔵にあったはずの古美術品百数十点が無くなっている事が分かり、どうやら事件は強盗殺人事件の様相を呈してきます。

そして最大の謎は、被害者の妻が被害者のために用意していたお弁当がきれいにカラッポになってキッチンの流し台に置かれていたにもかかわらず、被害者の胃には何も食べ物が入っていなかった事です!

解答編で明かされた真相は、「唯一無二」というよりはあくまで「最も自然な仮説」の域を出ない気はしますが、この作品はとにかく「28歳独身のキャリア組、音無美紀(よしき)警部(♂)」と「30歳独身の女刑事、則竹佐智枝」のキャラが立ってて面白い!

この二人は他の作品にも出てないのかな~?


「大きな森の小さな密室/小林泰三」

「ミステリーズ!」連載時、更に本格ミステリ作家クラブ編のアンソロジー「大きな密室の小さな鍵」(講談社文庫)で読んでいますので、読むのは今回で3度目です。

感想はこちらから→「大きな密室の小さな鍵」(講談社文庫)読了。


「ヘリオスの神像/麻耶雄嵩」

4番手は、独特の世界観で魅力的なキャラクターを生み出す麻耶雄嵩さんです。

自宅であるワンルームマンションで絞殺死体として発見された、大学3回生の「緑原衛理夫」。

現場にはギリシャ神話の太陽神ヘリオスの神像が3体飾られていたようですが、そのうちの2体は無残に打ち砕かれています。

死体発見者は同じゼミの仲間である「春野恭司」「夏川俊介」「冬木千恵子」の3人。

「冬木千恵子」は被害者の恋人でもありました。

どうやら緑原は誰かを恐喝していたらしく、恐喝されていたのは上記の3人に「秋山」を加えた4名の誰かのようです。

現場の不審点は破壊されたヘリオス神像だけではなく、窓には鍵が掛けられ、玄関のドアは内側からガムテープで目張りされた密室状態、エアコンは最強モードの暖房で熱風が吹きつけ、ガスコンロは開いたままでしたが、証言によれば現場でガスの臭いはしなかったとの事。

別の事件を調査中だった名探偵木更津悠也は、たまたまこの事件とも関わりが出来たためこちらの解決に乗り出してきて、あっさり真相を見破ります。

はたしてこの事件の犯人は?

オーソドックスな消去法タイプの犯人当てですが、一つ一つの可能性を丁寧に潰していくその過程はロジカルかつ分かり易く、好感の持てる作品でした。


「ゼウスの息子たち/法月綸太郎」

さて5番手は、悩める(?)ミステリ作家法月綸太郎さんです。

法月さんのこの作品は、ギリシャ神話をテーマにした短編集「犯罪ホロスコープⅠ 六人の女王の問題」(光文社カッパ・ノベルス)にも収録されている一篇です。

ゼウスの双子の子供たちであるカストルとポルックスのように、ホテル業を営んでいた藤堂家、外食チェーンを営んでいた遠山家にはそれぞれ双子の子供が生まれ、この双子同士は共にカップルとなって13年前にダブル結婚式を挙げ、晴れて夫婦となりました。

しかしエーゲ海での新婚旅行の最中、和也・香織夫妻は海難事故で行方不明になり、残された達也・沙織夫妻は悲しみに暮れながらも藤堂グループを大きく発展させました。

その藤堂グループが経営するリゾートホテル「四つ葉ホテル」でカンヅメすることになった作家の「綸太郎」ですが、そこに恐喝屋の「箕面崇(みのおたかし)」が姿を現し、パリの三ツ星レストランで修業したという「里中シェフ」に因縁をつけ、オーナーの「藤堂達也」を強請ろうとします。

ところがその夜、箕面崇が何者かに殺害され、死の間際に「偽物にやられた」という言葉を言い残します。

ホテルには芸能人の偽物のカップルも宿泊しており、果たして箕面の言う「偽物」とは誰を指すのか、綸太郎の推理が冴えます。

問題編から“ある事実”に思い当たれば自然と犯人にたどり着けるようにはなっていますが、そこに気付くのが難しい!

難易度は高めかな。


「読者よ欺かれておくれ/芦辺拓」

6番手は博覧強記の芦辺拓さんです。

のっけから著者である「芦辺拓」さんと、芦辺さんの作品の中核をなす名探偵である「森江春策」とのユーモラスなやり取りで幕を開けるこの作品。

森江春策が実際に体験した事件である「顔なし館」の事件を元にして芦辺拓が書いた小説、という体裁で問題編がスタートします。

「竜堂兵一」が経営する《ペンシオン・ヴァンファス》に向かう「品岡隆也」「葛原かすみ」「亀尾涼太」と「森江」の4人。

メイドの美少女「糸田レダ」の案内を受けてそれぞれの部屋に落ち着いた宿泊者たちですが、その日の深夜、ペンションの2階の「展示室」の前を通りかかった亀尾は「仮面を被った全裸の女性の死体」を見かけ、更によく見ようと展示室に入ろうとした所でドアが勝手に閉まり、部屋に入れなくなってしまいます。

皆を呼んで展示室を開けた時には中には誰もおらず、何かタチの悪いイリュージョンかと首を傾げる一同ですが、その後ペンションから500メートルほど離れた雑木林で葛原かすみの他殺体が発見されます。

あの鉄仮面の裸女はどうやって展示室から消えたのか、あれは殺害された葛原かすみだったのか、それとも・・・・・!?

そして、そもそもこのような犯行が可能だったのは、誰だというのか?

いや~、問題編を読んでいる時になんとなく引っかかった箇所はあったのですが・・・・・見事にやられました。

先日のNHKの「探偵Xからの挑戦状!」の時もそうでしたが、ミステリ作家さんというのは本当に色々考えるなぁ。

麻耶雄嵩さんの「ヘリオスの神像」のような正統的な理詰めではなく、まさに飛び道具的な一篇。

見事に欺かれました。


「左手でバーベキュー/霞流一」

トリを飾るのはバカミス(褒め言葉です)の大家、霞流一さんです。

映画やドラマの衣装デザインなどを手掛ける会社を経営している「倉石千夏」から、別荘でのバーベキューパーティーに呼ばれている、われらが名探偵「紅門福助(くれないもんふくすけ)」。

ガラス細工作家という一面を持っている千夏ですが、最近ときどき作品を盗まれる事があるため、その調査も兼ねての招待でした。

他にこのパーティーに参加しているのは、千夏の夫でシナリオライターの「倉石正平」、同じくシナリオライターの「奈本古志郎」と、この2人が講師をしているシナリオスクールの生徒で色気全開の「三笠真沙美」、後は千夏の部下である「小野寺海彦」などです。

ところが、バーベキューの準備をしている最中に、別荘の西棟で倉石正平の他殺死体が発見されます。

呼ばれた紅門が駆けつけた時には死体には左手首がありませんでしたが、どうやら死体発見時には確かに手首はあったとの事。

紅門はその状況から、死体を発見した奈本・小野寺・三笠の3人が現場を離れた後、犯人が再び現場に戻って来て死体の左手首を切断した、と推理します。

切断された左手首はバーベキューの網の上で黒々と焦げているのが発見されましたが、果たして犯人はなぜこんな事をしたのか?

そしてこの事件の真犯人は?

死体に施されていたあるトリックはまさにバカミス。

う~ん、これは分からないって。


という事で「犯人当てオムニバス」全7編。

NHKの「探偵Xからの挑戦状!」も、シーズン2がいよいよ開始間近です!

よし、これで肩慣らしは十分!?







ブログランキングに参加しています。
クリックして頂けると音倉誓示がこっそり喜びます(^^)
 ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓ 
  にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

「謎と論理と遊び心」トップへ


スポンサーサイト
2009/09/26 20:01|・アンソロジーTB:0CM:2

 

大きな棺の小さな鍵―本格短編ベスト・セレクション (講談社文庫)大きな棺の小さな鍵―本格短編ベスト・セレクション (講談社文庫)
(2009/01/15)
本格ミステリ作家クラブ

商品詳細を見る
森の奥深くにある別荘で起こった密室殺人、覆面レスラーの悲しい殺意、2本の鍵が握る、遺言の行方…。本格ミステリ作家クラブが厳選した、ファン必読のアンソロジー。

本格ミステリのアンソロジー「大きな棺の小さな鍵」を読みました。

親本は2005年に刊行された「本格ミステリ05」です(文庫化にあたり改題)。

冒頭の北村薫さん(本格ミステリ作家クラブ会長)の言葉本格ミステリは、時の波に洗われても古びない」が心に沁みます。


「大きな森の小さな密室/小林泰三」

「ミステリーズ!」(東京創元社)の懸賞付犯人当て小説企画の一編として書かれた作品で、私は今回再読です。

初読時はまったく犯人が分からなかった覚えがありますが、きちんと推理すれば分かるように書かれています。

当時(問題編は「ミステリーズ!」2003年冬号に掲載)は今以上に私が未熟だったという事ですね・・。


「黄昏時に鬼たちは/山口雅也

短編集「PLAY」に収録されている作品です。

詳しくは、こちら(「PLAY」の記事)をご覧くださいませ(とか言いながらあまり詳しい記事でもないですが・・)。

短編における「意外な真相」のお手本のような、個人的には非常に好きな作品です。


「騒がしい密室/竹本健治」

全体的に、昔からよく使われるネタ(トリック)を組み合わせたような印象の作品でしたが、真相に辿り着いたと思ったらまたそれが覆されて新たな真相が出てきたりたりと、中々楽しめました。

ただ、メインとなっている(?)イニシャルに関するネタが個人的にはイマイチで・・。


「覆面(マスク)/伯方雪日」

プロレス界を舞台にした珍しいミステリですが、「覆面レスラー」を効果的に使い、ありがちなトリックに上手くひねりをきかせて意外な展開で楽しませてくれました。

登場する刑事もいい味だしてます。

この「覆面」を含む連作ミステリ「誰もわたしを倒せない」(創元推理文庫)が2004年に発売され、2009年になった今でも作品はこの1冊だけだそうで・・・もったいない!

もっと読みたいです。


「雲の南/柳広司

ジョーカー・ゲーム」が好評を博している柳広司さんが2007年に発表した連作ミステリ「百万のマルコ」からの一篇です。

投獄されたマルコ・ポーロが、牢の中で色々な謎を語って聞かせるとういう形式の作品。

論理パズルのような趣のストーリーに、さらにもう一つ意外な真相を覆いかぶせてあり、さすがに上手い!

冒頭と最後に登場する「なぞなぞ」も楽しかったです!


「二つの鍵/三雲岳斗」

何と主人公はレオナルド・ダ・ヴィンチ!

元ネタとなるロジックを上手く中世の雰囲気に溶け込ませる手腕はさすがです。

本当にこの人は作風が広いなぁ。

ロジカルな推理展開は、有栖川有栖さんの「スイス時計の謎」を読んでいるかのようでした。


「光る棺の中の白骨/柄刀一

現在「第9回本格ミステリ大賞」の候補作にも挙げられている「ペガサスと一角獣薬局」にも収録されている作品です。

3年半前に生きていた人物が、5年前に閉ざされた密室から白骨となって発見される・・う~ん魅力的ですね!

このトリックは個人的にはちょっと・・でしたが、真相にたどり着くまでの伏線の張り方や、作品全体の幻想的な雰囲気はすごく良かったです。


「敬虔過ぎた狂信者/鳥飼否宇

短編集「逆説的」に収録されている一篇。

相変わらずバカバカしい作品を・・(もちろん褒め言葉です!)。

おかしな名前の登場人物ばかり登場すると思ったら・・・そうきましたか!

ホントにいつも楽しませてくれます。

とても「相棒」のノベライズと同じ人物とは思えない・・。


「木乃伊(ミイラ)の恋/高橋葉介」(マンガ)

ミステリ・・になるのかどうか分かりませんが、幻想的な作品でした。

「見えているのに見えていない」というのはミステリでも魅力的な題材です。


「密室作法[改訂]/天城一」(評論)

評論の感想を書く、というのもおかしな気がしますが、これは素晴らしかった!

もし私が今後ミステリ小説を書く事があれば、この評論は必ず繰り返し読む事になるでしょう。


と、いかにも初めて読んだかのようにここまで感想を書いてきましたが・・。

どうも読んでいて既視感がつきまとうな~と思っていたら、どうやら私は親本の「本格ミステリ05」を4年前にすでに読んでいるようです(途中まで全然気付きませんでしたが・・)。

いや~読んだ事のある作品をまた新鮮な気持ちで楽しめるなんて、脆弱な記憶力に感謝!ですね(負け惜しみ)。



さて、それじゃあオビを切り取って「第9回本格ミステリ大賞公開開票式」に応募するか・・。

抽選で10名の狭き門、目指せ招待状ゲット!!







皆様の応援がブログ更新の励みになります(^^)
よろしければ、お帰り前に応援クリックして頂けるとめっちゃ嬉しいです!!
 ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓ 
  にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

ホームへ


2009/02/24 23:59|・アンソロジーTB:0CM:0

 

七つの死者の囁き (新潮文庫)七つの死者の囁き (新潮文庫)
(2008/11/27)
有栖川有栖 石田衣良

商品詳細を見る
死者はそこにいる。生きている私たちの記憶の中に、夢の中に、そしてすぐ背後に。私たちを見つめ、語りかけ、時に狙っている。ひそやかで絶え間ない、死者たちの攻勢―。少女の幽霊は窓辺に立ち、死んだ恋人からのメールが届く。自殺した女の呪詛が響き、亡くなった男は秘密を打ち明け、死霊の化身が地底から出現する。怖恐と憂愁を纏った七つの死者たちの物語。文庫オリジナル。

新潮文庫11月の新刊。

有栖川有栖道尾秀介作品収録のオリジナルアンソロジー、とくれば買わない訳にはいきません。

ただし「本格ミステリ」のアンソロジーではないので、ミステリ的な視点で読まないようにするのに苦労しました。

という事で、以下各作品の感想です。


「幻の娘」/有栖川有栖

あの名作「幽霊刑事」で、殺された神崎刑事の幽霊とともに活躍した、霊媒体質の刑事「早川篤」が主人公です。

ある事件の容疑者がアリバイを主張しますが、それを証明してくれるという少女は実は10年前に死んでいて・・・。


ミステリとしてのトリックは非常にスタンダードで、真犯人を自供に追い込むまでの描写もわずか1ページほどに省略されています。

ですが当然この作品の読みどころはそういう部分ではありません。

幽霊が「見えてしまう」早川刑事が、自分には何が出来るのか、そして何をするべきなのかを悩み成長していく過程を頼もしく思い、そして少女の幽霊が姿を現す条件に思い当ったところで胸が熱くなりました。

有栖川有栖作品の中では「江神二郎」や「火村英生」ほど有名ではありませんが、個人的にはこの「早川刑事」が活躍する長編をまた読みたいです。

幽霊刑事」を未読の方は、この「純愛小説」と言ってもいいほどの感動作はぜひとも読んでみて下さい。

私は最後の数ページで涙が込み上げ、物語が幕を閉じたあとの10ページでさらにえらいことになりました



「流れ星のつくり方」/道尾秀介

真備庄介シリーズの1篇。

今回の主人公は真備でも道尾でもなく、助手の「北見凜」です。

旅先の旅館から夜の散歩に出かけた凜は、ふとしたきっかけである少年と出会います。

病弱そうな印象のその少年は、凜にある「問題」を出しますが・・。


凜から電話で話を聞いただけで真相を見破った真備の洞察力はさすがです。


その残酷な真相。

そして凜が作った流れ星に願いをかける少年。

ラジオを聴くのが好きなこの少年が、最後に明かすもう一つの真実。

その告白はあまりにも悲しすぎます。



「話し石」/石田衣良

「S氏は話し石の採集家だった。」の一文で始まる、わずか7ページの掌編。

冒頭に「星新一に捧げる」とある通り、まさに星新一さんのショートショート集を読んでいる気分になりました。

中学生の頃ショートショートを読み漁っていたのを思い出し、懐かしかったです。

石田衣良さんは、こういう作品も書けるんですね。



「熱帯夜」/鈴木光司

大学時代に、独特の雰囲気を纏った(というかちょっとイッてしまっている)女性と付き合い、ちょっとしたイタズラから、その後の人生を台無しにされてしまった男の話。

27年後、集中治療室で甘美な死の誘いを受け入れようとしている主人公の元に現れたのは・・・。



「嘘をついた」/吉来駿作

自殺した彼女の霊を、女友達と一緒に探す主人公。

次第に明らかになっていく、彼女の死の意外な真相と異常な動機。

何かをを守るためにいくつもの嘘をついてしまう主人公ですが、娘さんを亡くした「オッサン」に対して最後にかけた言葉は、優しさにあふれていました。



「最後から二番目の恋」/小路幸也

死の間際に「バク」と名乗る生き物が現れ、「あなたの思い出をくれれば、代わりにもう一つの人生をプレゼントします」と告げられます。

バクがプレゼントしてくれる「もう一つの人生」とは、「破れた恋の内の一つを選び、その恋が確実に実る人生」。


「最後から二番目の恋が実る人生」を選んだこの物語の主人公は女性なのですが、冒頭の「バク」との会話が性別不詳で描かれているため私は男性と思いこんでしまい、読んでいて途中まですごく違和感がありました。

特に意図があっての事では無いようですので、作者のミス?

終盤、「最後から二番目の恋」の意外な姿に驚かされ、また更にその外側にもう一つの切ない物語が。

これはぜひご自分の目で確かめてみて下さい。



「夕闇地蔵」/恒川光太郎

人の姿が「色」としてしか見えない「地蔵助」という捨て子が主人公です。

地蔵助は、友達の冬次郎がある廃屋で次々と女性を殺めている事を知ります。

止めなければ、と思う地蔵助ですが、冬次郎が女性と交わりそして殺めていく姿を何度も覗き見しているうちに、この覗き見自体に邪で淫らな興奮を覚えていってしまいます。

しかし、捜査の手が伸びてきた事に気付いた冬次郎は、昔地蔵助が捨てられていたという村はずれの冥穴堂に逃げて行き、そこで・・・。

不思議な物の怪も登場し、何とも言えない魅力を持った作品でした。




ミステリ以外の作品を読む機会はあまり多くはありませんが、こうして普段読まない作家さんたちの作品に触れるのも時々は楽しいものですね






皆様の応援がブログ更新の励みになります(^^)
よろしければ、お帰り前に応援クリックして頂けるとめっちゃ嬉しいです!!
 ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓ 
  にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

ホームへ



2008/12/18 23:07|・アンソロジーTB:0CM:4

ホーム 全記事一覧

ブログ内検索 

リンク 

このブログをリンクに追加する

読書ログ 

音倉誓示のつぶやき 

    follow me on Twitter

    最新コメント 

    最新トラックバック 

    Copyright(C) 2006 謎と論理と遊び心 All Rights Reserved.
    Powered by FC2ブログ. template designed by 遥かなるわらしべ長者への挑戦.
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。