~愛すべき「本格ミステリ」の世界~

プロフィール 

音倉誓示(Otokura Seiji)

Author:音倉誓示(Otokura Seiji)
魅力的な謎。論理的な解決。そして少しの遊び心♪
「本格ミステリ」の魅力が少しでも多くの人に伝わりますように。
元、某地方書店チェーンの店長。
九州在住。

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密室入門! (ナレッジエンタ読本14)密室入門! (ナレッジエンタ読本14)
(2008/11/20)
有栖川有栖(ミステリ作家)×安井俊夫(一級建築士)

商品詳細を見る
密室」は、ミステリ作品には欠かせない魅惑的なアイテムだ。この「人間が出入りできなかったであろう部屋」で行われる不可能犯罪について、本格ミステリの第一人者である有栖川有栖と、ミステリをこよなく愛する一級建築士・安井俊夫が、タッグを組んで立ち向かう。密室とはどういうものか?密室を実際に作ることはできるのか?古今東西の作品を例に、論理と建築の両面から、密室の仕組みとその謎に挑む。ミステリが200パーセント楽しくなる一冊。

有栖川有栖さんと、ミステリファンで建築家の安井俊夫さんとの共著「密室入門!」(メディアファクトリー)を読みました。

「第9回本格ミステリ大賞」の「評論・研究部門」の候補に挙がっていた1冊で、何度か過去の記事にも書きましたが、先月、ちょうど開票式に向かう飛行機の中で読んだ本です。

かなり熱心なミステリファンである安井さんは、有栖川さんの「女王国の城」に登場する「城」の図面を描かれた方でもあります。

この本は基本的に、お二人の対談に色々な図面や注釈を加えて分かりやすくまとめてある“対談集”のようなものなのですが、内容は密室の定義・分類から、建築家の目から見た密室、「電子ロック」や「生体認証」など最新の建築事情(密室事情?)など、非常に多岐に渡っており、とても楽しめました。

古典的な「針と糸」の解説から、天城一さんの定義する「純密室」などの話までとにかく「密室」づくし!

さすがに私もミステリファンとして「ビギナー」と呼ばれる段階は過ぎている気がしますので、紹介されている各種密室パターンもどちらかといえば“復習”という印象でしたが、とはいえ紹介されている作品群は未読の物も多く、色々と勉強になりました。

そして何より、密室について、そしてミステリについて語るお二人の会話の楽しそうな事!

有栖川さん自ら「大の大人2人が泥んこ遊びをするように語りまくった」と評していますが、まさにその通りの空気がとても良く伝わってきました。

同じ趣味を持つ仲間と好きな事について語り合うというのは、いくつになっても楽しい事ですよね。

きっと大学のミス研などもこんな雰囲気なのでしょう、うらやましい・・・(私の大学には残念ながらミス研はありませんでした・・・・・が、軽音楽部で毎日のように音楽に明け暮れてはいましたが)。


最後に、冒頭の有栖川有栖さんの「まえがき」から一部引用を。

「なぜ山(エベレスト)に登るのか?」
ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで訊かれた登山家ジョージ・マロリーは、こう答えた。
「そこに、それがあるからだ」
ミステリ作家への架空の質問に答えよう。
「なぜ密室を書くのか?」
「そこに、それがないからだ」


ああ、なぜこの人はこんなクサイ台詞がサマになるんでしょう。


あぁ、まだまだ、もっともっとたくさんのミステリを読みたい!という気持ちにさせる1冊でした。







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2009/06/17 01:52|・有栖川有栖TB:0CM:0

 

赤い月、廃駅の上に (幽BOOKS)赤い月、廃駅の上に (幽BOOKS)
(2009/02/04)
有栖川有栖

商品詳細を見る
赤い月の光----。それは邪気を招く不吉な月。鬼月が出た夜は、異界への扉が口をあける…。17歳の引きこもりの青年が、クロスバイクで旅に出た。四日目にある町の廃線跡の駅舎に辿り着き、野宿をする。そこに現れた鉄道忌避伝説を追う30代の鉄ちゃんライターの佐光。空に赤い月が出ているのを見た青年は不気味さを振り払おうとダベり始める。深夜に差しかかるころ、佐光はトイレに行くため駅舎を出る。それを見計らったかのように、赤い月はますますその光を増し…。怪談専門誌『幽』に連載された8編に加え、他誌に発表された2編を加えた初の怪談集、堂々刊行。

突然ですが、妻のつわりがピークのため、このところ帰宅後や休日は家事に追われてほとんどパソコンの前に座れていません。

掃除・洗濯・料理・子育て・etc・・これだけの事を普段日常的にこなしている妻はやはりすごい。

感謝感謝です。

新しい命は現在身長「7㎜」。

大切に育てていきたいと思います。


と言う事で(10日以上前ですが)有栖川有栖さんの鉄道怪談短編集「赤い月、廃駅の上に」(メディアファクトリー)を読みました。

有栖川さんの「ミステリではない小説」、どうなんでしょう。


「夢の国行き列車」

愛知万博〈愛・地球博〉のポスターを見て、幼き日の大阪万博を思い出す主人公。

当時熱狂的な万博少年だったという6歳年上の上司は、家庭内の問題などを抱えながらもいつも大阪万博の楽しい思い出を胸に生きています。

そんな上司がある日突然姿を消し・・。


相変わらず大阪の地名・駅名が次々と出てきて関西の人間以外には分かりづらいですが・・なんとなく寂しいストーリーでした。

それにしても有栖川さんって、この「6歳年上の上司」と同い年ですよね。

かなり著者自身の体験が反映されていそうな作品でした。


「密林の奥へ」

異国の地で放浪の旅をしている24歳の主人公。

いつ来るか分からない列車を簡易宿泊所で待っている間に、あるおしゃべり好きな中年の行商人と仲良くなり、その行商人は「密林の奥へ分け入って刺激的な体験がしたい」と望む主人公に興味深い話を教えてくれます。

曰く――「K***へ向かうなら、W***で乗り換えて西へ向かうといい。そのまま奥へ奥へ進んで行けば、“空の鯨”と呼ばれるとてつもない大きな鳥に出会えるだろう」。

言われたとおりのルートで密林の奥へ向かった主人公。

持っている地図には載っていない、発音すら出来ない駅に辿り着き、そこから更に、1週間に1本という列車に乗り換え密林の奥へ奥へと進んでいきます。

道中では甘い樹液の匂いが窓から流れ込み、張り出した植物は車体を打ち、密林の奥の闇では獣の目が妖しく光り、禍々しい鳥の声が飛び交う中で毒々しい花が咲き乱れ・・。

そしてついに辿り着いた土地で主人公が目にしたのは・・。


う~ん、げにすさまじき森の生命力。



「テツの百物語」

6月半ば、じめじめした夜の事。

鉄道ファン向けのウェブサイトで知り合った5人は「鉄道怪談のオフ会」をやる事にします。

百物語さながらに、1人の話が終わるたびに蝋燭を1本づつ消していき、最後1本が消えたその時――。


ラスト1行は、さすが筋金入りの「テツ」ならではでした。


「貴婦人にハンカチを」

気まぐれな旅の途中、その黒光りする優美な姿から<貴婦人>と呼ばれているC57型<SLばんえつ物語号>に乗ってみた、23歳の英嗣。

意外にすいていた車内で4人掛けのボックス席に座った英嗣ですが、斜め向かいの席に、30代前半とおぼしき品のある女性―まさに<貴婦人>と呼ぶにふさわしい―が座ってきます。

いまひとつ会話が弾まないまま車窓を眺めていると、沿線にいる人々が走り去る汽車に手を振ってきます。

そして、小学校の教諭をしているという貴婦人が唐突に語り始めた話は・・。


切なくて、いい話でした。

最後の会話もニクい。


「黒い車掌」

目的の無い旅に出ていた梢子は、電車の中で車掌がだんだん黒くなっていくのを目撃します。

最初は青い制服に身を包んでいたはずの車掌。

いつのまにか制服が少しずつ黒くなり、制帽の庇は顔に黒い影を落とし、ついにはその全身の輪郭さえもぼやけてきます。

そして、停車する駅で、あるいは車内で次々と姿を現す、梢子の大切な人たち。

そう、それはあくまで「偶然」の出来事・・。


そしてあまりに辛い結末でした。


「海原にて」

大海原を航海中の船上で、船長や研究員たちとの会食に招待されたジャーナリストのサクラ。

研究員のローゼンタールがエドガー・アラン・ポーの作品を話題に出したのを皮切りに、奇談の蒐集家だという船長が海にまつわる数々の怪談を披露しはじめます。

――「生への執着は、人だけが持つものでもない。」

甲板に出たサクラが海上で目撃したものは・・。


スケールの大きな怪談でした。


「シグナルの宵」

隠れ家めいた場末のバー<シグナル>。

忙しかった仕事がやっと一区切りつき、朋美は2カ月ぶりにこの行きつけのバーを訪れます。

店内ではいつもの常連たちが顔をそろえていますが、話題は自然と先日鉄道自殺した元常連客「大庭さん」の話になってしまいます。

そこへ突然姿を現した「大庭さん」と瓜二つの男。

本人は双子の弟だと言いますが・・。


この短編集の中では割とミステリー色の濃い1作でした。

しかし読み終わった時には思わず全身に鳥肌が・・。


余談ですが、作中の「推理作家」と「ミステリー作家」についての会話はちょっと興味深かったです(それさえもちょっとした伏線になっている所はさすが有栖川さん!)。


「最果ての鉄橋」

そこは「最果ての駅」、人が最後に辿り着く場所―。

三途の川を舟で渡っていたのは大昔の話。

人口増加・死者の増加にともない小船から蒸気船、大型フェリーへと変遷し、数年前から鉄道に切り替わったとの事(笑)。

臨死体験をして、ここに来たのは2度目というお婆さんの話によれば、鉄橋で三途の川を渡る前に何とか引き返せば生き返ることが出来るといいます。

列車は鉄橋にさしかかり彼岸に向かって走り続けますが、どこの世界にも手抜き工事をする悪徳業者が・・。


ブラックユーモアたっぷりで楽しめました。


「赤い月、廃駅の上に」

1年生の秋に高校に行かなくなり毎日ぶらぶらしていた主人公は、5月半ば、自転車を使った1週間の旅に出ます。

観光スポットとなっている廃駅で野宿することにした主人公。

たまたま「鉄道忌避伝説」について調べているという鉄道好きのフリーライターも居合わせ、共に待合室で野宿することにします。

しかし鉄道というのは「邪気が吹き込みやすくなる異界への扉」、ましてや空にはほんのりと赤い月が―。


表題作だけあって、「いかにも」なストレートな怪談でした。


「途中下車」

帰宅途中、時々降りた事のない駅で途中下車し、見知らぬ街の散策を楽しむ47歳バツイチの主人公。

9年前に離婚しその翌年に急逝した元奥さんは有名な美人女優で、その噂を知ってか、会社では今でも女性社員に人気があります。

結婚していた当時、2人だけの秘密の言葉だった「アタシャール」。

最近その言葉が幻聴として聞こえ始めた主人公なのですが、通勤中の電車の窓ごしに、突然「アタシャール」という看板が目に飛び込んできます。

何度も電車に乗って、ついにその「アタシャール」の看板の場所を探し当てるのですが・・。


切ない。

とにかく切ない。

有栖川有栖さんの「本格ミステリ」はもちろん大好きですが、一度この人の書いた「恋愛小説」を読んでみたい。

幽霊刑事」といいこの「途中下車」といい、ミステリファン以外にもぜひ読んで貰いたいです。


ファンのひいき目はあるかもしれませんが、やはり有栖川有栖さんは「本格ミステリ作家」としてだけではなく「小説家」としてもいい作品を書かれる作家さんだと思います。

この文章で、なおかつ端正な本格ミステリを書かれたのでは、そりゃあファンが増えて当然ですね。

未読の作品もまだ少し残っていますので、いずれ近いうちにそれらも読んでしまいたいです。



さて、しばらくブログを休んでいたので記事を書けていない読了本が積み上がって来ています。

仕事も、家事も、ブログも、頑張るぞっと。







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2009/03/24 03:25|・有栖川有栖TB:1CM:2

 

今年は、有栖川有栖先生のデビュー作「月光ゲーム」が上梓されてちょうど20年!

有栖川有栖先生のファンサイト「有栖川探偵小説事務所」の管理人である堀江梨穂さんを中心に、以前から企画が進んでいた「20周年記念ピンズセット」が本日届きました。


P1080729 - コピー
チェシャ猫のマーク(普段あとがきに使われているマークから)


P1080726 - コピー
英都大学校章(「マレー鉄道の謎」サイン会時に配られた名刺から)


P1080728 - コピー
EMCバッチ(今回用にデザイン)


P1080721 - コピー
珀友社社章(今回用にデザイン)


カメラの性能と私の未熟な腕のせいで多少ピンボケなのはご容赦くださいませ。


堀江さんのご厚意により、珀友社の名刺も同封されておりました(私の実名入りですので画像は出せませんが・・)。

このピンズセットは建前上ファンの皆で作成した事にはなっておりますが、実質は上述の堀江梨穂さんが、ピンズ作成会社の選定や注文の取りまとめ・商品の発送など、この企画のほとんどの部分を一人でされており、多少の意見とわずかな費用を出しただけの私は本当に頭が下がるばかりです。

堀江さん、本当にお疲れ様でした。

そして、すばらしい企画をありがとうございました。


このピンズセットは、当然有栖川有栖先生はじめ、関係者の方々にも送られております。


有栖川先生、喜んでくれるといいな~♪







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2009/01/08 23:42|・有栖川有栖TB:0CM:4

 

女王国の城 (創元クライム・クラブ)女王国の城 (創元クライム・クラブ)
(2007/09)
有栖川 有栖

商品詳細を見る
舞台は、急成長の途上にある宗教団体“人類協会”の聖地、神倉。大学に顔を見せない部長を案じて、推理小説研究会の後輩アリスは江神二郎の下宿を訪れる。室内には神倉へ向かったと思しき痕跡。様子を見に行こうと考えたアリスにマリアが、そして就職活動中の望月、織田も同調、四人はレンタカーを駆って木曾路をひた走る。“城”と呼ばれる総本部で江神の安否は確認したものの、思いがけず殺人事件に直面。外界との接触を阻まれ囚われの身となった一行は決死の脱出と真相究明を試みるが、その間にも事件は続発し…。江神シリーズ待望の書き下ろし第4長編。

ついにと言うかようやくと言うか、有栖川有栖さんの「女王国の城」を読みました。

本格ミステリブログを立ち上げている人間が「女王国の城」もまだ読んでなかったのか、と叱られそうですが、読んでしまうのが勿体なくて、購入したままずっと大切に寝かせてあったのです。

この気持ち、分かってください(誰に言い訳してるんだろう?)


仕事柄大晦日も正月も働き詰めのため、毎年の事ですが、帰省する妻と子供たちに置いて行かれ、一時的な単身赴任状態のまま今年も一人で年を越しました。

そこでささやかな楽しみ。

今年は「女王国の城」を、文字通り読みながら年を越しました。

ちょうど第3章を読んでいる辺りで新年を(そして有栖川有栖さんの記念すべきデビュー20周年の年を)迎え、ミステリファン、そして有栖川有栖ファンとしてはこれ以上無い幸せな年越しでした。

さて、長い間寝かせてあったこの本が、熟成されてさらに面白味が増したかどうかは分かりませんが、以下、あらすじと感想です。


冒頭、初心者ドライバーであるアリスの運転するレンタカーで、木曾山中の「神倉」という土地を目指す「英都大学推理小説研究会(EMC)」の4人。

「ちょっと遠出するかもしれん」という言葉を残して行方をくらませた江神二郎部長を心配した4人は、下宿に残された痕跡を元に、部長は「神倉」へ向かったのではないかと推理し、後を追いかける事にします。

「神倉」-そこは「人類協会」という宗教団体の本部があり、住民の9割が「会員(信者)」という、特殊な街。

紆余曲折を経て何とか江神部長との再会を果たしたEMCの面々ですが、運悪く人類教会の本部である「城」の中で殺人事件に遭遇してしまい、警察への通報を頑なに拒否する人類協会の会員たちによって、「城」に軟禁されてしまします。

何とか脱出しようと奮闘するアリスたちですが、その間にも第2、第3の事件が・・。




という事で、毎回クローズドサークルの「江神二郎シリーズ」ですが、今回は宗教団体の本部である「城」、そしてそれをとりまく「神倉」という土地に閉じ込められてしまいます。

内容に関しては、いつもの有栖川作品と同じように、いやそれ以上に数々の伏線が張り巡らされ、それが論理的にある1点に向かって収束する、これ以上ない最高の作品でした。


ストーリーに関してあまり突っ込んだ感想を書くとネタバレにも繋がりかねませんので、今回は一つ、作中の事件とあまり絡まない所で感想をつらつらと・・。


まずは序盤、ほんのわずかに触れられる「桜川の変死体」。

そう言えばそうでした。

私が「神倉」という土地に聞き覚えがある気がしたのは単なるデジャ・ヴでは無かったのですね。

以前「ミステリーズ!」(東京創元社)で数名の作家さんが競作した「川に死体のある風景」。

その1篇が、有栖川有栖の「桜川のオフィーリア」(←主人公は江神二郎)でした。

私の記憶力もまだまだ捨てたものじゃないな・・。


今回なぜか四字熟語を会話に入れるのが小さなブームになっているらしいマリアたち。

緊迫した場面でもついつい笑ってしまいそうな会話がいくつもちりばめられていました。

それと同じく、エラリィ・クイーンフリークの望月先輩はやはり会話にクイーンが何度も登場するのですが、マリアがそれとなく「思考機械ヴァン・ドゥーゼン教授」の名前を出した場面にも思わずニヤリ。

彼女達の置かれた状況から「13号独房の問題」をすぐに連想した私は、やはり立派なミステリマニアでしょうか?

あぁ、また「思考機械の事件簿」が読みたくなってきた・・。


終盤、UFOオタクの荒木とともに「陰謀」について議論する場面がありますが、そこでの江神部長の「幼稚で誇大な妄想と”戯れてみせる”のが本格ミステリだ」というくだりは非常に感銘を受けました。


そして今回も不敵に読者の前に立ちはだかる「読者への挑戦」。

いつもとは少し雰囲気の違う「読者への挑戦」に、まさしく全身の血が泡立つ思いでした。

そこに並んだ言葉の美しさ。

そして「本格ミステリ」を心から愛し、それを貫き通す「有栖川有栖」という人物の、あまりに大きなその存在。

気障な文章が気障に見えない、その自信あふれる「読者への挑戦」に、心をわしづかみにされました。

本格ミステリとは”最善を尽くした探偵”の記録だ。」

座右の銘にさせていただきます。


さて、アリスの「性寂論」とでも言うべき「寂しさ」についての独白も、切なく、とても興味深かったですが、やはり気になるのはアリスとマリアの関係。

マリアが、久々の再会で「アリス、握手。私と握手して」と言っていたシーンで悶え、終盤の「俺に命を預けてくれるか?」ではちょっと笑ってしまいました。

それにしても、ラストの「ううん、全部」は・・。

おぉ~、次回作が気になります!

それと今回は織田先輩がカッコ良かった!!

次回作でも皆に見せ場があるといいな♪



あとがきでも触れていましたが、この「江神二郎シリーズ」は、番外編とでも言うべき短編たちを別にすれば、以前から「長編5作で完結予定」と著者は語っています。

その通りであれば、いよいよ次回が完結編。

江神二郎は、母親の預言(呪い?)にどう立ち向かうのか。



本格ミステリとはどうある「べき」か?

本格ミステリはどこに向かう「べき」か?

そんな議論とは少し距離を置いているように見える著者。

ただひたすたらに本格を愛し、貫き、迷わず書き続ける有栖川有栖なら、きっとまた「江神二郎」の素晴らしい物語を創造してくれることでしょう。


その日を楽しみに、いつまでも待ちます。







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2009/01/05 01:27|・有栖川有栖TB:0CM:2

 

火村英生に捧げる犯罪火村英生に捧げる犯罪
(2008/09/25)
有栖川 有栖

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「とっておきの探偵にきわめつけの謎を」。臨床犯罪学者・火村への挑戦状が予告する犯罪とは―。洒脱。諧謔。情熱。驚き。本格推理の旗手の技に酔う。


さて、今日は「火村英生(作家アリス)シリーズ」の最新短編集「火村英生に捧げる犯罪」です

未読の「女王国の城」を職場のロッカーに入れたまま、どんどん他の本ばかり読んでますが・・

個人的には、昔「J-PHONE」(←もうありませんが・・)の携帯サイト(「Jミステリ倶楽部」だったかな?)で読んだ短編なども収録されていて、ちょっと懐かしかったです


「長い影」

短編(中編かな?)とはいえ、アリバイトリック・動機の謎・関係者のミッシング・リンク、と色々な謎が詰め込まれており、贅沢に楽しめました。

殺害に使われたトリックも(私が知っている限り)斬新なものでしたし、1枚の写真からある事実を見抜く火村准教授の冴えもさすがでした。

ですが、何よりイイのは、終盤火村がある人物をじわじわ追い詰めていく、あの緊迫感!

ああいうゾクゾクする感覚が、火村英生シリーズの魅力の1つではないかと勝手に思ってます

「あとがき」で刑事訴訟法の改正について少し触れられていましたが、これはミステリ小説には少なからず影響を与えますよね

私はちょうど「安楽椅子探偵と忘却の岬」を推理していて、この刑事訴訟法の改正について少し調べている時にこの「長い影」を読みましたので、思わぬ関連に「おっ!」という感じでした

ま、結局推理はハズれましたけどね・・


「鸚鵡返し」

7ページの掌編ですが、何と初の「火村視点」!

それだけでもすごく斬新です!

自分が「作家アリス」になって、火村から話しかけられているような気分で読めました

トリックもちょっとマヌケというか・・でも犯人にとっては真剣ですよね


「あるいは四風荘殺人事件」

ある作家の書きかけのミステリ小説を読んで、火村が真相を推理する、という異色作。

登場する小説の中で使われていたトリックは、理系チックであまり好みではありませんでしたが、私にしては珍しく、真犯人は見事に推理できました!

珀友社の片桐さんの、相変わらずの火村フリークっぷりが楽しかったです

私も火村英生が書いた推理小説は読んでみたいかも・・

また、この作品については「あとがき」の有栖川先生の言葉「名探偵は事件なんか解いていない。ミステリ作家が用意した解答を見破ってみせているだけだ」、が非常に印象的でした。

悪意ある(?)人たちが、この事に関してあげ足を取ってくる場合もあったり、話を大きくすれば「後期クイーン問題」などにも絡んでくるとは思いますが・・別にいいんです!

私たち本格ミステリファンは、そんな事は全て踏まえた上で「上質な知的遊戯」である「本格ミステリ」を愛してますからっ!!

・・と言う事で、敬愛するミステリ作家の皆様。

これからも、素晴らしい作品をどんどん生み出してくれることを期待しています!


「殺意と善意の顛末」

読んでいるうちに、以前携帯サイトで読んだ時の記憶が蘇り・・真相を思い出してしまいました

まあ、5年ぶりとはいえ再読なのでこういうこともありますね。

ちょっと残念。

ただ「5年前も本格ミステリを読んでたのか・・」と思うと、なんか感慨深かったりして


「偽りのペア」

こういう、ちょっとした心理的な錯誤、みたいな話は大好きです

ちゃんと(?)オチもついてたし


「火村英生に捧げる犯罪」

来ました表題作!

ちなみに有栖川先生にとって「探偵の名前が入った書名」は初めてだそうです。

警察に送られてきた、火村英生に対する挑戦状。

そして作家アリスにかかってきた、盗作疑惑の電話。

わずかな手掛かりから、火村は意外な真相に・・。

久々の(?)「因幡丈一郎」も登場です。

得られた教訓は「悪事を隠すには、日本語は正しく使いましょう」ですね


「殺風景な部屋」

これも珍しく、火村は電話越しにしか登場しません(作者の都合で)。

アリスから話を聞いただけで、4人の容疑者から真犯人を特定します。

フィールドワークが信条の火村先生にしては珍しい、アームチェア・ディテクティヴっぷり!

一応ダイイングメッセージもの、と言う事になるのでしょうが、ちょっと無理があったような・・


「雷雨の庭で」

凶器の謎・・は最初のほうでピンと来たのですが、火村が真相にたどり着くまでの細かい伏線とその回収がさすがに見事でした。

「作家アリス」の作品はまだ3冊なんですね。

早く「女王国の城」を書かないと

「学生アリス」はこんなにたくさん書いてるのに

放送作家コンビにリアリティがあったので、「篠崎警部補シリーズ」が観てみたくなりました
(「古畑任三郎」みたいなものかな?)。







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2008/10/12 23:02|・有栖川有栖TB:1CM:2

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